《其ノ壱 牛鬼》 ページ3
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自身の足元を見ると、初めて見た時と何一つ変わりない石の階段が目に入った。苔がところどころ生えており、手すりは錆ている。昔に造られた階段だと察するのにそう時間はいらなかった。
顔を上げると、赤と黒の境目がはっきりとした鳥居が目に入る。少女は驚きに目を見張った。
こんなところに、神社なんてあっただろうか。
微かな警戒の色をのせて、鳥居をくぐった。真っ先に視界に入った景色は神社そのものだった。深い緑の色をした樹は青々として何とも言えない香りが漂った。葉と葉が風によって優しくぶつかり合い、互いを揺らし合っている。境内はそこまで広くはなく、目立つものは強いて言うならば
折角神社に来たのだから、お参りでもして行こうか。
少女は真っ先にそう思い、拝殿へと向かった。だが、賽銭箱や鈴緒が見当たらない。不思議に思ったが少女は特に気にせず二礼二拍手一礼を行った。慣れた手付きでお参りを終わらせ、少女休憩がてらには少しだけ神社を見て回って行こうと考えた。
そういえば、と少女は思案を巡らせる。来た当初は見ることもしなかったが、拝殿へ向かって振り返った時に、鳥居を挟むように狛犬が置かれていることに気が付いた。狛犬の前まで歩き、狛犬だけを見据えた。狛犬を見て、少女は首を傾ける。疑問が少女の頭に浮かんだ。
これは本当に犬なのだろうか?
頭から角を生やし、口から牙を生やして険しい顔立ちで立つ狛犬。明らかに犬ではないと言える証拠として、人型をしていた。ただでさえ犬かどうか疑惑があると言うのに、その狛犬?は手に金棒を持っていた。
こんな動物、現世に存在するのだろうか。強いて言うならば、【鬼】という生物に似ている気はするが。
「鬼、なのかなぁ…」
少女は気が付けば言葉を発していた。だが、言葉を発していたところで、返事が返されるとは思わない。
「これはお前の思っている通り、鬼だ。鬼なんぞ生物、中学生の割にはよく知っているな」
「そうですか。ありがとうございます。」
高くも低くもない、中性的な声が真後ろから聞こえ、少女は何事もなく簡潔に礼を言って会話を終わらせた。
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いふ(プロフ) - 幻想作家さん» アドバイス感謝いたします…!私は昔の言葉に弱いので、そういうアドバイスなどは大変ありがたいものです!応援誠に感謝いたします。これからも学びながら書いていくのでお見苦しい所があるかもしれませんが、頑張らせていただきます! (1月17日 22時) (レス) id: ca7a82974a (このIDを非表示/違反報告)
幻想作家 - 指慣らしはフィンガースナップといいますが和風なら「指を鳴らす」だけで大概は伝わるでしょう。オリジナルでここまで細かく面白いものは中々作れないと思います。ブックマークするので頑張ってください。 (1月17日 20時) (レス) id: ab3b389dea (このIDを非表示/違反報告)
いふ(プロフ) - 人見さん» ぴ゛ゃ!?コメントいただくとは思っても見なかったのでリアルで変な声が出てしまいました…。ご感想ありがとうございます!マイマイ並みの更新速度ですが、頑張らさせていただきます!! (1月14日 16時) (レス) id: ca7a82974a (このIDを非表示/違反報告)
人見(プロフ) - 「〜しやがれ」とか些細な表現がコミカルで面白いです!更新頑張ってください!応援しています (1月14日 13時) (レス) id: 882ef10c58 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:いふ | 作成日時:2021年1月5日 17時