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《其ノ壱 牛鬼》 ページ12

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これ以上お腹を空かせる前に早く帰ろう。


屋台へ歩を進めて、通りすがろうとした時、


「これ四つください」


聞き覚えのある中性的な声がふと茉鯉の耳に入る。驚きで目を丸くし、屋台の方へ目をやる。看板の写真を指差し、洋菓子の四つ分の代金を払う男性。その男性は自身の黒い髪を低い位置でひとつにまとめており、赤い組紐が蒸し暑い空気に撫でられている。亭主は洋菓子を丁寧にそっと紙袋に入れ、男性に渡した。男性は紙袋をぶら下げて、踵を返す。そこで立ち止まっている茉鯉と目が合った。


「…あ、お前、昨日の、」


赤色の目が茉鯉を見据える。だが男性が眉をひそめて何かを察する。


「おい、走るぞ」

「へっ?どういう…?うわっ!?」


男性は顔を顰めて、無理矢理茉鯉の手首を掴んだ。下駄の音を奏でながら、男性は茉鯉を連れて駆け出したのだった。




◆❖◇◇❖◆❖◇◇❖◆❖◇◇❖◆



何分走ったのだろうか。遠く近くで交差していた様々な声はすっかり沈み、辺りは静寂と化していた。左に高い位置で結んだ亜麻色(あまいろ)の髪はなびくばかりで、止まることを知らない。人気が無くなったところで男性は茉鯉の手首を離した。


「おい、お前」


男性が振り返り、茉鯉に尋ねる。


「お前は何か呪われるようなことをしでかしたのか?」

「の、呪われるって…。どういう…?」


男性の頬に冷や汗が垂れる。今の男性からはあからさまな剣呑の雰囲気が感じ取れる。言葉が足りず、状況を飲み込めない茉鯉にとっては何が起きているのかさっぱりで、首を傾げる。


「これ持っとけ」


そう言って渡されたのは先ほどの洋菓子。男性から紙袋を渡され、両手で抱えるようにして持つ。その刹那、それが突然起こった。


僅かな葉の音も、小さい虫の声すらもかき消す、甲高い音が響く。



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設定キーワード:和風 , オリジナル , 怪奇物   
作品ジャンル:ファンタジー, オリジナル作品
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いふ(プロフ) - 幻想作家さん» アドバイス感謝いたします…!私は昔の言葉に弱いので、そういうアドバイスなどは大変ありがたいものです!応援誠に感謝いたします。これからも学びながら書いていくのでお見苦しい所があるかもしれませんが、頑張らせていただきます! (1月17日 22時) (レス) id: ca7a82974a (このIDを非表示/違反報告)
幻想作家 - 指慣らしはフィンガースナップといいますが和風なら「指を鳴らす」だけで大概は伝わるでしょう。オリジナルでここまで細かく面白いものは中々作れないと思います。ブックマークするので頑張ってください。 (1月17日 20時) (レス) id: ab3b389dea (このIDを非表示/違反報告)
いふ(プロフ) - 人見さん» ぴ゛ゃ!?コメントいただくとは思っても見なかったのでリアルで変な声が出てしまいました…。ご感想ありがとうございます!マイマイ並みの更新速度ですが、頑張らさせていただきます!! (1月14日 16時) (レス) id: ca7a82974a (このIDを非表示/違反報告)
人見(プロフ) - 「〜しやがれ」とか些細な表現がコミカルで面白いです!更新頑張ってください!応援しています (1月14日 13時) (レス) id: 882ef10c58 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:いふ | 作成日時:2021年1月5日 17時

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