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《其ノ壱 牛鬼》 ページ11

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翌夕。
その日は、おそらくこの夏の中でも一番の猛暑だろう。前日までのような蒸し暑い風が吹くこともなく、日陰もそこまで涼しくはなく、全体的にカラッとした暑さだった。道の端に点々と生えている木々には蝉が止まり、短い命を奮って啼いていた。人々はそのあまりの暑さに、気だるそうな表情を隠せないでいた。下校途中である茉鯉自身もこの酷熱に辟易していた。

日は既に逢魔が時。昨夜は色々な考えが頭の中を往来し中々に寝付く事が出来なかった。昨日の社、そしてなによりあの男性が気になって仕方がない。足を止め、顎に手を当てて唸るように考え込む。


鬼怒神社(きぬじんじゃ)、だったっけ。あの神社にもう一回立ち寄ってみようかな…」


もしあの男性が本当に祟り神なのであれば、私は取り憑かれるか喰われちゃうかもしれない…。


だが実際、鬼やあやかしなどのこの世ならざる者の存在を信じている、というわけではなく(いるかもしれない) その程度の認識であった。


やめよう。

きっとそう易々と赤の他人である自分が踏み入れていい世界ではない。ただでさえ昨日は命を落としそうになったのだ。


茉鯉は一度頷いて、自宅へと足早に駆けていった。




◆❖◇◇❖◆❖◇◇❖◆❖◇◇❖◆




なにやら帰路がやけに騒がしい。疑問が頭の中で漂い、茉鯉はきょろきょろと辺りに探りを入れながら歩を進めた。石畳の上で靴が擦れる音と昨日の閑静な町とは正反対の騒がしい音が茉鯉の耳に届く。瞬きを数回繰り返して見慣れた風景を一瞥していると、音の原因が目に入った。


ああ、なるほど。


茉鯉はそう納得する。音の正体は物売りであった。亭主が路上を移動しながら喉を震わせて声を発していたのだ。亭主は足を止め、そこで洋菓子を売り始めた。あれほど大きな声を出していたものだから、辺りの人々はちらちらと屋台を見ている。亭主は看板を取り出し、屋台の付近に看板を立てた。看板には色鮮やかな文字と、その下には売られている洋菓子の写真が貼ってある。

屋台の周りにはふんわりと甘い薫りがその場を支配し、興味を持った者は近寄り、洋菓子を買っていた。茉鯉の横を切る人の手には食べかけの洋菓子が握られており、さぞ美味しそうに頬張っている。だが、茉鯉は今、生憎と下校途中なのだ。財布を持っていない茉鯉に選択肢はない。茉鯉はため息をこぼし、肩を落として落胆した。



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設定キーワード:和風 , オリジナル , 怪奇物   
作品ジャンル:ファンタジー, オリジナル作品
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いふ(プロフ) - 幻想作家さん» アドバイス感謝いたします…!私は昔の言葉に弱いので、そういうアドバイスなどは大変ありがたいものです!応援誠に感謝いたします。これからも学びながら書いていくのでお見苦しい所があるかもしれませんが、頑張らせていただきます! (1月17日 22時) (レス) id: ca7a82974a (このIDを非表示/違反報告)
幻想作家 - 指慣らしはフィンガースナップといいますが和風なら「指を鳴らす」だけで大概は伝わるでしょう。オリジナルでここまで細かく面白いものは中々作れないと思います。ブックマークするので頑張ってください。 (1月17日 20時) (レス) id: ab3b389dea (このIDを非表示/違反報告)
いふ(プロフ) - 人見さん» ぴ゛ゃ!?コメントいただくとは思っても見なかったのでリアルで変な声が出てしまいました…。ご感想ありがとうございます!マイマイ並みの更新速度ですが、頑張らさせていただきます!! (1月14日 16時) (レス) id: ca7a82974a (このIDを非表示/違反報告)
人見(プロフ) - 「〜しやがれ」とか些細な表現がコミカルで面白いです!更新頑張ってください!応援しています (1月14日 13時) (レス) id: 882ef10c58 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:いふ | 作成日時:2021年1月5日 17時

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