・ ページ7
.
「お疲れ様」
「うん」
「……紫耀?」
「ん、」
「どうしたの?」
「なにが」
「なんかあった?」
「なんもない」
ああ、もう分かってるんだろうな。
素直になれない俺は、また面倒くさい男になってる。
気づいてほしいって少しの望みを簡単に叶えてくれるAに
甘えすぎてる。どうしようもない俺のこの感情を溶かしてくれる。
「嫌なことあったって顔してる」
「してない」
「嘘つくと唇噛むもん」
「……噛んでねえし」
「こっち見て」
無意識。だって目も見れない。
吸い込まれそうな純粋なその瞳に俺は恋をした。
何年経っても未だにドキドキするよ。
温かい小さな手のひらで俺の両頬を包むと、
自然に絡まる視線。
「歌詞間違えちゃったの?」
「違う」
「じゃあダンス?」
「違う」
「え、もしかして、ぬれおかき捨てたこと怒ってる?」
「……は?捨てたの?」
初めて知る事実に笑いそうになる。
……そんなこと、どうでもいいんだよ。
必死に弁解してくるAが更に愛しく見えて。
俺の悩みなんて、どうってことねえんだなって思わせてくれんだ。
「だって賞味期限切れだったから…」
「……バーカ」
言葉と行動が一致してない。
溢れ出す愛しさが、さっきまでの俺を素直にする。
「ごめんね、怒んないで?」
「怒ってねえ」
「紫耀の体、冷たい」
「今日寒かった」
「よしよし」
「バカ、ちげえだろ」
頭ポンポンって何歳児だよ、俺。
「こっち」って手を回して抱き締めれば、すげえ温っけえ。
苦しい〜って騒ぎ出したけど、声は楽しんでる。
「紫耀がいるだけで私は幸せだよ」
「なんだよ急に」
「そう言ってほしいだろうなって」
「……はぁ?」
「素直になりなさい」
「……ムカつく」
" ごめん " の言葉は飲み込んで、今、目の前にある幸せに
" ありがとう " を込めて、微笑むAに口づけを。
【 愛しさ 】__ ホワイト・ルシアン
.
415人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
まきこ(プロフ) - 全部のお話すごく好きです!!甘えてくれる紫耀くん可愛すぎますね!またいろんなお話読めるの楽しみにしてます^ ^ (2021年2月14日 8時) (レス) id: cfbbd37a93 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:詠夢 | 作成日時:2021年2月7日 1時