◎:パラダイムシフト ページ24
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こんな筈ではなかった、と言うやつは大抵、自分を正当化する。それなりに言い訳を考えてから結局は自分が招いた結果に納得して、開き直るのが主流だろう。人は誰しも都合の良いように脳内で思考転換しているに違いない。だけどこうやって新生活が始まって早々に身支度に時間を費やしすぎて乗る筈だった電車に間に合わず、紫耀に送ってもらうという大惨事。オマケに新調したアイロンでオデコは火傷するし、ヒールで靴擦れは起きるし、こんな筈だった、なんて綺麗事は言えないくらいに参ってる。
『そのスタイルで何時間かかってんだよ』
「うるさいな、早く出してよ」
『生意気言ってんと口塞ぐぞ』
適当にスルーして助手席に乗り込むとドリンクホルダーには私が好きなカフェラテが置いてあった。
「え、これ」
『ガムシロ2個な』
「……ありがと」
『ん』
呼び出しといて扱いが雑なのは付き合いが長いから。それでもこうやって些細な気遣いにはいつもキュンとする。それが長続きしている理由だったりもする。結局巻こうとした中途半端な髪の毛はハーフアップで紛らわした。暑苦しくなったスーツを脱いで、ワイシャツ1枚になると紫耀はすかさず文句を垂らす。
『え、待ってインナー着てねえの?』
「あ、分かる?」
『透け透けじゃん』
「平気だよ」
『平気とかの問題じゃねえんだわ』
「えー」
運転しながら横目でずっと私の観察を続ける紫耀は不機嫌になりながら脱いだスーツを投げてきた。桜並木をくぐって、もうすぐ目的地に到着する手前、思いの外、時間に余裕があった。紫耀がプレゼントしてくれた腕時計を目視した途端、紫耀は勢いよくハンドルを左に切った。
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まきこ(プロフ) - 全部のお話すごく好きです!!甘えてくれる紫耀くん可愛すぎますね!またいろんなお話読めるの楽しみにしてます^ ^ (2021年2月14日 8時) (レス) id: cfbbd37a93 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:詠夢 | 作成日時:2021年2月7日 1時