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「ちょっと待って」
「なに」
「持って帰るの?」
「え、だって俺にくれたんでしょ?」
「そうだけど、」
「だからもらっとく」
「だって、どろっどろだよ?」
「冷やせば固まるっしょ」
「え、ちょ、」
意味が分からなかった。というか理解できなかった。廉の名前が出た時点でもう既に紫耀の中で私は除外されたはずなのに。こうした無駄な優しさに縋っては紫耀が定める " 好きな子 " には程遠いのだと思い知る。幾度となく諦めたし、一生越えられない壁=友達を演じて、ひたすら隣をキープ。無差別に自然な流れで、紫耀はいつも誰1人として傷つけずにフリーを貫く。
「で、渡したの?廉には」
「さっきからなんで廉?」
「仲良いじゃん」
「高校同じってだけじゃん」
「じゃあ高校ん時は渡したんだ?」
「だから!」
なんでムキになってるんだろう。自分の気持ちを踏み躙られて悔しかった。何もかも伝わってなくて当然だけど、根掘り葉掘り聞いてくる理由はなんなの?私は脈なしって言いたいんでしょ?もういいよ。
「もういいから返して」
「怒んなよ」
「ついてこないで」
「俺もこっちだもん」
「隣歩かないで」
「いやお前実際俺のこと好きっしょ」
「……は?」
「おお、こっわ笑」
図星すぎて後退りした。こんなシチュエーションでよくもそんなことが易々と言えるな。あたかも最初から気づいてました、みたいに涼しい顔しやがって!……でも、そんな顔も国宝級にカッコいいからムカつく。
「……廉のは成功したよ」
「は、やっぱ渡したのかよ」
「って言ったらどうする?」
「……お前まじでふざけんな」
煽ること自体に慣れてないから、やってみたら案外楽しいね。みるみるうちに眉間に皺を寄せて近づいてくる紫耀に腕を掴まれた。かなりの至近距離にまたまた後退り。今度はよろけた肩をスマートに支えてくれた。
「じゃあこれ俺だけ?」
「ん」
「フォローできなくてごめんね」
「え?」
「ほんとは死ぬほど嬉しい」
ずっと好きだった、なんてどんなチョコよりも甘い言葉で溶かされてしまったよ、私の心がね。
Happy Valentine
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まきこ(プロフ) - 全部のお話すごく好きです!!甘えてくれる紫耀くん可愛すぎますね!またいろんなお話読めるの楽しみにしてます^ ^ (2021年2月14日 8時) (レス) id: cfbbd37a93 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:詠夢 | 作成日時:2021年2月7日 1時