愛とか恋とか《短編集》【 sh 】 (ページ15)

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◎：溶けてなくなれページ15

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今更ね、堅っ苦しいバレンタインデーなんて誰も望んでないと思うんだよ。この歳になってようやく気づいた。前日の夜に徹夜して、好きな人を思い浮かべて、渡す前にドキドキして、……なんて淡い恋愛を期待したってねえ。

「どろっどろに溶けてんだけど」
「え」
「どうしたらこうなんの？」

ほらね、現実こんなもん。慌てて中身を覗き込むと箱の底に垂れ流しのように染みつく生チョコが見えた。手作りなんてするだけ無駄だ。曇っていく紫耀の顔を拝みながら今日も眩しいね、なんて心の中で唱えた。

「……最悪、」
「これ作ったの？」
「６年ぶりに」
「すげえじゃん」
「どっちの " すげえ " なの？それは」
「俺こんなんもらったら好きな子でもフォローできないわ」

え、今やんわりとディスられて、やんわりとフラれたよね？こんな真冬に溶けるわけないと思いながら電車の中で優雅に居眠りをしていた間に事件は起きていた。

「ごめん、返して」
「廉のは成功した？」
「……は？」

溶け出したチョコが滲み出した箱を紙袋に戻しながら私の言葉は無視して淡々と放つ。……ん？え、ちょっと待って、なんで廉？……って、そんなことより。

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