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157.大切な息子 ページ7

「和咲、主人を守れず、

 本当に申し訳ない。君の最後の仕事だ。

 Aのことをお館様に伝えてほしい。」


 要は和咲に寄り添うようにそばにいてくれた。

 和咲は目を潤ませると、

 静かに青空に向かって飛んでいった。



 俺はAの羽織と隊服を

 綺麗に畳んで風呂敷に入れると、

 彼女の日輪刀を携えてA家へと向かった。



「あら?杏寿郎さん?こんにちは。

 Aはここにはいないけれど…」


 Aの生家へ着くと、お母様が出迎えてくれた。

 彼女は俺が手にしていたAの日輪刀を目にすると、

 全てを悟ったように泣き出してしまった。



 家の中には彼女しかおらず、

 皆、出かけてしまったようだ。


 居間へと通されると、

 俺は彼女の日輪刀と羽織、隊服を差し出した。



「今朝方、鬼の始祖と遭遇したようです。

 最終的には彼女自身が鬼化してしまい…

 陽光を浴びてこの世から去ってしまいました。

 大切な娘さんを助けられず、守ることができず…

 本当に申し訳ございません。」


「…杏寿郎さん、そんなことを言わないで。

 あなたも辛いでしょう。

 あの子は…あなたに出会えて幸せだったと思うわ。」


 お母様は風呂敷を開けると、羽織を手に取って

 泣きながら微笑んだ。


「あの子に似合うと思ってね。

 最終選別に向かう時に私とお父さんから贈ったものなの。」


「Aさん、その羽織をとても気に入っていました。

 春を告げる桜のように素敵な色で、

 着ると気持ちが明るくなるとよく言っていましたよ。

 それから…お母様、これを。」


 俺は胸ポケットからあるものを取り出して、

 彼女の手のひらに乗せた。


「Aさんの隊服に入っていたものです。」


「ふふふ。これは私がAにあげた紅ね。

 せっかくあの子に贈ったのに…

 私のもとに帰ってきてしまいました。

 あの子ね、昨夜言ってたの。

 今夜は杏寿郎くんと約束があるからって。

 …きっとこの紅をさしたのね。」


 目に涙をいっぱい溜めて話す彼女の姿に

 胸が締め付けられる。


「杏寿郎さん、この羽織はあなたが持っていて。」


「しかし…」


「その方がAも喜ぶ気がするの。

 きっとあなたのそばにいたいはずだから…ね?」


「良いの…ですか?」


「良いに決まっています。またいつでもいらしてちょうだい。

 あなたは大切な私の息子なのだから。」

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設定タグ:煉獄杏寿郎 , 鬼滅の刃 , 夢小説   
作品ジャンル:アニメ
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狐姫(プロフ) - 小鈴さん» 感想ありがとうございます!最後までお読みいただき光栄です。物語は読んでもらってこそ生きるものだと私は思うので、この作品を見つけてくださり、そして読んでくださったこと、本当にありがとうございます! (2022年11月15日 18時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)
小鈴(プロフ) - 素敵なお話をありがとうございました。途中からずっと、涙なしでは見られませんでした。この作品の主人公と煉獄さんに出会えて本当に良かったです! (2022年11月14日 22時) (レス) @page50 id: 97399e389e (このIDを非表示/違反報告)
狐姫(プロフ) - misakimiさん» 最後までお付き合いいただき、感謝申し上げます。主人公に感情移入し、物語に入ってもらってこそ、この小説の醍醐味と思い作っていたので、大変光栄です!あたたかいコメントにいつも励まされておりました。ありがとうございました! (2022年7月16日 7時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)
misakimi(プロフ) - 読了が遅くなりました。お疲れ様でした。長らく愉しませて頂きました。現し世でなくても、ハッピーエンドとは!こういう纏め方もあるのかと感心です。彼女の気持ちに入り込んでいたため、逢いたいけど早いよと涙しました。 (2022年7月15日 16時) (レス) @page50 id: cb1d4026ae (このIDを非表示/違反報告)
狐姫(プロフ) - 美桜さん» ありがとうございます!起承転結の「転」は恐らく読者様の予想を超えるものになってしまったかもしれません。しかし、美桜さんのように嬉しいお言葉をいただけると、作者として本当に幸せです♡最後まで読んでくださり、ありがとうございました! (2022年7月10日 15時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:狐姫 | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/kohime_yume  
作成日時:2022年6月12日 13時

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