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186.引かれる思い ページ36

 




 縁側にAと並んで腰を下ろす。

 風が赤く染まった彼女の頬を優しく撫でた。

「会いたかった。」

 俺が真剣な顔でそう言うと、

 Aは「今生の別れじゃないんだから…大袈裟だよ」と、

 口元に手を当てて上品に笑った。


「そうか!そうだよな!

 俺は悪い夢を見ていたようだ。」


「悪い夢?」


 Aは不思議そうに眉を上げて、俺の顔を覗き込んだ。


「うむ。…君のいない未来だ。」

「私のいない…未来?」


 風に揺すられさらさらと流る彼女の髪が甘く香った。

 手ですくうと、指の間をするりと抜けていく。


「私はここにいるよ。

 いつだって杏寿郎のそばにいる!」


 屈託のない笑顔に胸がとくんっと高鳴った。

 君は本当にずるい人だ。
 


「あ、見て。入道雲だ。」


「夕立が来るかもしれぬな!」


「杏寿郎は雨、好き?」


 唐突な質問に驚いて、

「作物にとっては恵みだから好きだな」と答えると、

 彼女は「食いしん坊」と笑った。


「私はね、空にかかる虹が好き。

 虹は雨が降らないとできないでしょう?

 だから雨も好き。

 どんなに強く、長く雨が降ったとしても、

 止まない雨はないから。

 その後には、あたたかい太陽の光が降り注いで、

 空には綺麗な虹の橋が架かる。」


 空を見上げる彼女の横顔。俺の大好きな横顔。


「うむ。君は人と人を繋ぐ虹のようだな。」


「え?そうかなあ。ふふふ。嬉しい!

 私が虹だとしたら、杏寿郎は太陽だね。」


「太陽?」


「人々を明るく照らし、導いてくれる。

 なくてはならない、心あたたかい太陽だよ。」

 
「なんだか照れるな!」



 その時だった。身体が妙な炎に包まれた。


「杏寿郎!?」


 この感じ…なんだ?

 竈門妹の鬼の気配がする…

 竈門少年…?鬼…?


 俺は…何をしに来た?

 父上に報告を…いや、そうではない!


 俺は鬼を倒しにやってきたのだ!!


 目の前にいるAは…幻?

 なるほど…これが無限列車の鬼の血鬼術か。


 俺が立ち上がり、Aに背を向けると、

 彼女は俺の隊服の袖を掴んだ。


 ぐいっと後ろに引かれる。

 振り返りたい。

 振り返ってずっと君のそばにいると言ってやりたい。

 
「杏寿郎…」


 君が俺の名を呼んでくれる。

 鈴の音のような綺麗な声が頭から離れない。


 俺が黙ったまま俯いていると、背後から羽織をかけられた。

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設定タグ:煉獄杏寿郎 , 鬼滅の刃 , 夢小説   
作品ジャンル:アニメ
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狐姫(プロフ) - 小鈴さん» 感想ありがとうございます!最後までお読みいただき光栄です。物語は読んでもらってこそ生きるものだと私は思うので、この作品を見つけてくださり、そして読んでくださったこと、本当にありがとうございます! (2022年11月15日 18時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)
小鈴(プロフ) - 素敵なお話をありがとうございました。途中からずっと、涙なしでは見られませんでした。この作品の主人公と煉獄さんに出会えて本当に良かったです! (2022年11月14日 22時) (レス) @page50 id: 97399e389e (このIDを非表示/違反報告)
狐姫(プロフ) - misakimiさん» 最後までお付き合いいただき、感謝申し上げます。主人公に感情移入し、物語に入ってもらってこそ、この小説の醍醐味と思い作っていたので、大変光栄です!あたたかいコメントにいつも励まされておりました。ありがとうございました! (2022年7月16日 7時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)
misakimi(プロフ) - 読了が遅くなりました。お疲れ様でした。長らく愉しませて頂きました。現し世でなくても、ハッピーエンドとは!こういう纏め方もあるのかと感心です。彼女の気持ちに入り込んでいたため、逢いたいけど早いよと涙しました。 (2022年7月15日 16時) (レス) @page50 id: cb1d4026ae (このIDを非表示/違反報告)
狐姫(プロフ) - 美桜さん» ありがとうございます!起承転結の「転」は恐らく読者様の予想を超えるものになってしまったかもしれません。しかし、美桜さんのように嬉しいお言葉をいただけると、作者として本当に幸せです♡最後まで読んでくださり、ありがとうございました! (2022年7月10日 15時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:狐姫 | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/kohime_yume  
作成日時:2022年6月12日 13時

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