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165.兄の笑顔と父の心 ページ15

〈千寿郎 side〉

 

 Aさんの訃報を聞いてから、

 夜に何度もが覚めてしまい、眠れなくなっていた。


 大好きな人だった。

 強くて、優しくて、兄とよく似ていた。


 物心つく前に亡くした母の記憶はあまりないけれど、
 
 Aさんが優しく僕に接してくれるたびに、

 母のような安心感を覚えていた。



 Aさんがいなくなってからも

 兄はおかしなくらいに人の前では普通だ。

 その心を慮るとどれほど辛いことか…

 それでも、いつもの笑顔を僕に向けてくれる。


 思えば母が亡くなった後もそうだ。

 僕が寂しくて泣いていると、兄は僕を背負って

 泣き止むまでそばにいてくれた。


「ごめんください。」


「和尚さん、こんにちは!父なら自室におります。」


 和尚さんを父の自室へ通すと、

 僕はお茶を入れてお盆の上に乗せた。

 父の自室の前に着いて、襖を開けようとした時、

 和尚さんの声が聞こえてきて手を止めた。


「槇寿郎殿、Aさんのことを耳にしました。


 今の杏寿郎くんの気持ちは、

 貴方様が1番良く分かるでしょう。

 寄り添ってあげなさいな…」



「大馬鹿者だ…!息子を置いて逝くなど…

 あの女も鬼殺隊なんかやめておけば良かったのだ…


 もう…誰も…」



 父の声だ。初めて聞く声色に胸が苦しくなった。



「和尚からも言ってくれ!

 杏寿郎もいい加減鬼殺隊などやめろと!

 どうせ大したものにはならない!」


「そうじゃ…ないでしょう?」


「うるさい!分かったようなことを言うな!!

 出て行け!!もう二度とくるな!!」


 父が怒鳴り上げると、和尚さんは大きなため息をついて

 襖を開けて出てきた。


「千寿郎くん。すまないね。

 今日はもう帰るとするよ。」






 和尚さんが帰られると、

 入れ替わるように兄が帰宅した。




 今夜、兄は任務が入っていないようで、
 
 久しぶりに並んで寝ようと言ってくれた。
 

 大きくなって共に寝るのは

 くすぐったい気持ちもあるけれど、

 それよりも兄と一緒にいれることが何より嬉しい。



「兄上、千寿郎です。入りますね。」


「うむ!寝床の準備はできたぞ!

 そろそろ眠りにつこうか!」
 

「はい!」



 二人並んで寝っ転がると、

 おもむろに兄上が口を開いた。






* 千寿郎side 終 *

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設定タグ:煉獄杏寿郎 , 鬼滅の刃 , 夢小説   
作品ジャンル:アニメ
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狐姫(プロフ) - 小鈴さん» 感想ありがとうございます!最後までお読みいただき光栄です。物語は読んでもらってこそ生きるものだと私は思うので、この作品を見つけてくださり、そして読んでくださったこと、本当にありがとうございます! (2022年11月15日 18時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)
小鈴(プロフ) - 素敵なお話をありがとうございました。途中からずっと、涙なしでは見られませんでした。この作品の主人公と煉獄さんに出会えて本当に良かったです! (2022年11月14日 22時) (レス) @page50 id: 97399e389e (このIDを非表示/違反報告)
狐姫(プロフ) - misakimiさん» 最後までお付き合いいただき、感謝申し上げます。主人公に感情移入し、物語に入ってもらってこそ、この小説の醍醐味と思い作っていたので、大変光栄です!あたたかいコメントにいつも励まされておりました。ありがとうございました! (2022年7月16日 7時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)
misakimi(プロフ) - 読了が遅くなりました。お疲れ様でした。長らく愉しませて頂きました。現し世でなくても、ハッピーエンドとは!こういう纏め方もあるのかと感心です。彼女の気持ちに入り込んでいたため、逢いたいけど早いよと涙しました。 (2022年7月15日 16時) (レス) @page50 id: cb1d4026ae (このIDを非表示/違反報告)
狐姫(プロフ) - 美桜さん» ありがとうございます!起承転結の「転」は恐らく読者様の予想を超えるものになってしまったかもしれません。しかし、美桜さんのように嬉しいお言葉をいただけると、作者として本当に幸せです♡最後まで読んでくださり、ありがとうございました! (2022年7月10日 15時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:狐姫 | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/kohime_yume  
作成日時:2022年6月12日 13時

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