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156.燃えるような柘榴石 ページ6

 羽織を抱きしめれば

 Aの匂いがする。

 彼女のぬくもりがまだここにある。


 ひらひらと舞う桜、君と見るはずだった桜。

 君は桜のように俺を惹きつけ、そして散ってしまった。


 不意に背中を押すような突風が吹いて

 俺の腕の中にあったAの羽織が空を舞った。



 それはまるでAが飛んでいるようだ。



「淡紅舞う…


 空で舞を踊っているのだな。」



 ふと、湖に目を向けると朝日に照らされた水面が反射して

 キラキラと輝いていた。

 俺はおもむろに湖に近づくと、黙って腰を下ろした。



「A、綺麗だな。君もどこかで見ているのだろう?」


 
 浅瀬を覗き込むと、何やら光るものが沈んでいる。

 なんだろうと気になり、袖を捲って湖の中に手を入れた。



 透き通る水の底

 太陽の光を浴びて淡く光るは

 燃えるような柘榴石(ざくろいし)



 それは俺がAに渡した指輪だった。逢引だからと、

 その手の左薬指につけてくれていたのだろう。

 戦いの時に落としてしまったのかもしれない。


 その中央に飾られた柘榴石は…

「まるで…Aの瞳のようだな。」

 手に取って朝日にかざすと笑うように光り輝いた。



「…美しい。」


 俺は指輪をぎゅっと握り締めた。


「A、最後に伝えられなかったことがある。

 君を愛している。

 今も、これからも。ずっと、ずっと、愛している。」



 愛する人を失った。

 絶対に手を離さないと誓ったのに…


 俺が任務に同行していれば…

 あの時もっと早くAのところに向かっていれば…


 そんなことを言っても、もう彼女は戻ってはこない。

 時を巻き戻す術などない。



 前を向くしかないだろう。

 Aが俺に託してくれた想いを胸に進むしかないだろう。

 
 下を向いていたらきっと彼女に怒られる。



 でも、今日だけ。

 今日だけは…君を想って泣いても良いか?



 君の分まで頑張ると誓うから。

 心を燃やして生きていくから。




 今だけは…








ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
〈読者の皆様へ〉

 『淡紅舞う4』までお付き合いくださり、
 ありがとうございます。少々辛い展開ではありますが…
 物語はまだ続きますので、最後までご一緒していただけると
 嬉しいです。

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設定タグ:煉獄杏寿郎 , 鬼滅の刃 , 夢小説   
作品ジャンル:アニメ
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狐姫(プロフ) - 小鈴さん» 感想ありがとうございます!最後までお読みいただき光栄です。物語は読んでもらってこそ生きるものだと私は思うので、この作品を見つけてくださり、そして読んでくださったこと、本当にありがとうございます! (2022年11月15日 18時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)
小鈴(プロフ) - 素敵なお話をありがとうございました。途中からずっと、涙なしでは見られませんでした。この作品の主人公と煉獄さんに出会えて本当に良かったです! (2022年11月14日 22時) (レス) @page50 id: 97399e389e (このIDを非表示/違反報告)
狐姫(プロフ) - misakimiさん» 最後までお付き合いいただき、感謝申し上げます。主人公に感情移入し、物語に入ってもらってこそ、この小説の醍醐味と思い作っていたので、大変光栄です!あたたかいコメントにいつも励まされておりました。ありがとうございました! (2022年7月16日 7時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)
misakimi(プロフ) - 読了が遅くなりました。お疲れ様でした。長らく愉しませて頂きました。現し世でなくても、ハッピーエンドとは!こういう纏め方もあるのかと感心です。彼女の気持ちに入り込んでいたため、逢いたいけど早いよと涙しました。 (2022年7月15日 16時) (レス) @page50 id: cb1d4026ae (このIDを非表示/違反報告)
狐姫(プロフ) - 美桜さん» ありがとうございます!起承転結の「転」は恐らく読者様の予想を超えるものになってしまったかもしれません。しかし、美桜さんのように嬉しいお言葉をいただけると、作者として本当に幸せです♡最後まで読んでくださり、ありがとうございました! (2022年7月10日 15時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:狐姫 | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/kohime_yume  
作成日時:2022年6月12日 13時

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