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196.想いは舞い、甘く濡れる ページ46

「そんな…杏寿郎が…」

 ぬるい雫が頬を伝い、

 真白なワンピースに吸い込まれるように消えていく。


「あの子はよく頑張りました。立派でした。

 私は杏寿郎にたくさんのものを背負わせてしまいました…

 今となっては、もっと優しい言葉をかけてあげれば良かった

 と後悔しています。」


「瑠火様…それはお嘆きになる必要はないと思います。

 あなた様のお言葉が、彼の生きる柱だったのですから。」


「Aさん…

 あなたが杏寿郎のそばにいてくれて本当に良かったです。

 私はこれからあの子を迎えに行きます。

 そして、必ずAさんのもとへ連れてきますから…」


 瑠火様はそう言うと、静かに歩み始めた。

 幼い我が子を置いて逝かねばならなかった心、

 若くに死した我が子を迎えに行かねばならない気持ち、

 瑠火様のことを思うと、あまりにも辛くて

 胸がぎゅっと痛んだ。




 無限列車の乗客全員を救った。

 二百人もの人を誰一人死なせはしなかった。

 後輩の盾となりながら、自らの責務を全うした。


 杏寿郎、あなたはやはりすごい人。

 正真正銘、鬼殺隊を支える柱だ。


 
 まだこちらに来るべきではないと心の底から思うし、

 もっと長生きして幸せな時を過ごして欲しかった。


 でも、もういいよね。

 あなたは頑張ったのだから。もう十分だよ。

 痛みもない、あたたかなこの場所で、

 私はあなたを笑顔で迎えようと思う。



 私は足元に落ちていた作りかけの花冠を拾って

 再び手を動かし始めた。



 風が優しく吹くと、

 どこからか桜の花びらが落ちてきて空を見上げた。

 ひらひらと落ちる桜は、青い空で舞を踊るようだ。
 
「綺麗…」

 幻想的な風景に見惚れていると、背後から声が降ってきた。


「A」


 忘れられない。忘れることのできない。

 私の大好きな声がした。

 振り返るとそこには愛する人の姿があった。


「杏寿郎…」


 笑顔で迎えようと思っていたばかりなのに、

 私の視界は滲んでぼやけていく。


 私が立ち上がると、杏寿郎は一目散に駆けて来て、

 強く、きつく、私を抱きしめた。

 逞しい身体に包まれると同時に、鼻を掠める彼の匂い。


 互いに言いたいことは山ほどある。

 伝えたい言葉はたくさんある。

 私たちはその全ての想いを唇に乗せた。


 重なる唇はずっとあなたを覚えていて、

 懐かしい想いに口づけは甘く濡れていく。

197.指輪→←195.あなたの匂い



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設定タグ:煉獄杏寿郎 , 鬼滅の刃 , 夢小説   
作品ジャンル:アニメ
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狐姫(プロフ) - 小鈴さん» 感想ありがとうございます!最後までお読みいただき光栄です。物語は読んでもらってこそ生きるものだと私は思うので、この作品を見つけてくださり、そして読んでくださったこと、本当にありがとうございます! (11月15日 18時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)
小鈴(プロフ) - 素敵なお話をありがとうございました。途中からずっと、涙なしでは見られませんでした。この作品の主人公と煉獄さんに出会えて本当に良かったです! (11月14日 22時) (レス) @page50 id: 97399e389e (このIDを非表示/違反報告)
狐姫(プロフ) - misakimiさん» 最後までお付き合いいただき、感謝申し上げます。主人公に感情移入し、物語に入ってもらってこそ、この小説の醍醐味と思い作っていたので、大変光栄です!あたたかいコメントにいつも励まされておりました。ありがとうございました! (7月16日 7時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)
misakimi(プロフ) - 読了が遅くなりました。お疲れ様でした。長らく愉しませて頂きました。現し世でなくても、ハッピーエンドとは!こういう纏め方もあるのかと感心です。彼女の気持ちに入り込んでいたため、逢いたいけど早いよと涙しました。 (7月15日 16時) (レス) @page50 id: cb1d4026ae (このIDを非表示/違反報告)
狐姫(プロフ) - 美桜さん» ありがとうございます!起承転結の「転」は恐らく読者様の予想を超えるものになってしまったかもしれません。しかし、美桜さんのように嬉しいお言葉をいただけると、作者として本当に幸せです♡最後まで読んでくださり、ありがとうございました! (7月10日 15時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:狐姫 | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/kohime_yume  
作成日時:2022年6月12日 13時

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