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105.恋を知っているから ページ5

 



 目の前に広がる光景は

 信じられないもので…

 いや、そう言うより、「信じたくない」もので

 間違いであってほしいと強く願った。




 愛おしい彼の唇を塞ぐ一人の少女。






 見間違えるはずもない。



「花子…さん?」



 その少女は以前任務を共にした

 鬼殺隊、階級(みずのと)の谷山花子さんだった。





「離れてくれ。」




 杏寿郎は彼女の身体を離すと自身の腕で唇を拭った。




「わ…私!!

 煉獄様のことを…ずっと、ずっと…


 追いかけてきたのです!!」



 杏寿郎を追いかけてきた…?



「昔、鬼から助けていただいた時からずっと憧れでした。

 いつかこの気持ちをお伝えしたくて…



 あれ…?Aさん…どうしてここに?」




 花子さんと目が合うと、

 彼女は少し狼狽えて後退りをした。




「Aは俺の恋人だ。

 君の気持ちはとても嬉しいのだが、申し訳ない。

 その気持ちには応えられない。」




「えっ…そんな…」



 杏寿郎…






 花子さんは下唇を噛むと、

 俯いたまま私の方へ近づいてきた。





「花子さん…」




 彼女は普段からは想像もできないような形相で

 私を睨みつけると目には涙を溜めながら言葉を投げつけた。




「ま…負けませんから!!!

 この気持ちだけは…相手がAさんでも…

 絶対に…絶対に負けられません!」




 そう言うと彼女は駆け足でその場を後にした。





 複雑な思いで目を落とすと、

 杏寿郎は私の手を引いて屋敷の中へと連れ込んだ。





「杏寿郎?」



「すまなかった。

 君に嫌な思いをさせてしまった。」




「いえ。

 誰が誰を想おうと自由だから…

 私も恋を知っているから、

 花子さんの気持ちは痛いほど分かる。」





 杏寿郎は私の頬を撫でると、

 そのままお風呂場へと足を運んだ。




「君は本当に優しい人だ。

 
 無論、花子という女性の気持ちを無下にしたくはない。

 しかし、どうしても応えることはできないんだ。




 君という心から愛する人を見つけてしまったから…」





 彼はお風呂場に着くと

 静かに隊服を脱ぎ始めた。




「湯浴みをするの?それなら私は…」




「背中を…

 背中を流してはくれないか。」




「え…?」




 熱を宿した瞳が私を閉じ込めて



 離さない。





「良いか?」




 鼓動が騒がしく響く身体



 私は黙って頷いた。

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設定タグ:煉獄杏寿郎 , 鬼滅の刃 , 夢小説   
作品ジャンル:アニメ
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狐姫(プロフ) - misakimiさん» misakimiさん、コメントありがとうございます!夜空に咲く花のシーンは、私自身お気に入りのシーンなので、そう言っていただけて、とても嬉しいです!ありがとうございます。 (2022年6月12日 20時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)
misakimi(プロフ) - 夜空に咲く花を背にした二人の情景が浮かぶ綺麗な文章にも癒されました。 (2022年6月12日 18時) (レス) @page44 id: cb1d4026ae (このIDを非表示/違反報告)
misakimi(プロフ) - ストレートに伝えて下さる煉獄さんに、またまた癒やされました。本日もご馳走さまでございます! (2022年6月12日 18時) (レス) @page43 id: cb1d4026ae (このIDを非表示/違反報告)
狐姫(プロフ) - エリスさん» エリスさん、応援ありがとうございます!ずっと読んでくださっているだなんて感激です♡ 更新の励みになります!ぜひ、最後までお付き合いくださいませ。 (2022年5月5日 0時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)
エリス(プロフ) - 第三弾おめでとうございます^ ^こっそりとずっと読んでます(笑)これからも応援してます! (2022年5月4日 23時) (レス) @page12 id: 8779dd4f89 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:狐姫 | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/kohime_yume  
作成日時:2022年4月27日 20時

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