133.追憶 ページ33
「ごめんください。」
「はあい！
あら？A？久しぶりだねえ。立派になって…」
ジリジリと肌を照りつけるような夏を越えて、
鱗雲が空に浮かぶような季節がやってきた頃、
私は任務に行く前に祖母の家へと寄った。
「しばらく来られずにごめんなさい。
おばあちゃん、元気にしていた？」
「お陰様で元気だよ。ねえ、おじいちゃん。」
祖母はそう言うと、
仏壇に飾られた祖父の写真を愛おしそうに眺めた。
私は仏壇の前に座ると、お線香をあげて手を合わせる。
立ち上る線香の煙はゆらゆらと揺れて
まるで祖父が喜んでくれているように思えた。
祖父の写真を見ていると、
私はふと、祖父母の馴れ初めを聞いてみたくなった。
「おばあちゃん、あのさ。」
「うん？どうしたんだい？」
「おじいちゃんとはどうやって知り合ったの？」
突然の質問に、祖母は目を見開いて驚くと、
口元に手を当てて照れ臭そうに笑った。
「急にどうしたの？」
「なんとなく、知りたいなあと思ったの。
聞いてもいい？」
「構わないよ。大したものではないけどね。」
祖母は庭に植えられたほんのり赤色に染まり出した
紅葉の木を見つめながら話し始めた。
年号が明治になって間もない頃、
祖父母は親戚の勧めでお見合い結婚をしたという。
「正直ね、おばあちゃんはおじいちゃんとの
結婚に対して乗り気ではなかったのよ。」
「え！？そうなの？」
「そうよ。当時、おじいちゃんは鬼狩りをしていてね。
鬼殺隊は政府非公認組織だから、その時の私には
理解ができなかった。
もちろん、鬼に出会ったこともなかったからね。
…それに、私には心に決めていた人がいたのよ。」
祖母は幼き頃から想いを寄せていた人がいたそうだ。
その人は日本初の鉄道開通に向けて働きたいと志願して
遠くに行ってしまったという。
「夢を追いかけていた人だったわ。
おばあちゃんなんて毎日生きるのが必死でね、
夢なんて考えたこともなかったわ。
自分にないものを持っている人だったから、
余計に惹かれたのかもしれないと、今になったら思うの。」
「素敵な人だったんだね。」
祖母はこくりと頷いた。
秋の涼しい風は紅葉を揺すり、ひんやりと私の頬を撫でる。
「でもね、ある日を境に私の心はおじいちゃんに
奪われてしまったの。」
「ある日を境に…？」
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狐姫(プロフ) - misakimiさん» misakimiさん、コメントありがとうございます！夜空に咲く花のシーンは、私自身お気に入りのシーンなので、そう言っていただけて、とても嬉しいです！ありがとうございます。 (2022年6月12日 20時) (
レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)
misakimi(プロフ) - 夜空に咲く花を背にした二人の情景が浮かぶ綺麗な文章にも癒されました。 (2022年6月12日 18時) (レス) @page44 id: cb1d4026ae (このIDを非表示/違反報告)
misakimi(プロフ) - ストレートに伝えて下さる煉獄さんに、またまた癒やされました。本日もご馳走さまでございます! (2022年6月12日 18時) (レス) @page43 id: cb1d4026ae (このIDを非表示/違反報告)
狐姫(プロフ) - エリスさん» エリスさん、応援ありがとうございます！ずっと読んでくださっているだなんて感激です♡ 更新の励みになります！ぜひ、最後までお付き合いくださいませ。 (2022年5月5日 0時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)
エリス(プロフ) - 第三弾おめでとうございます^ ^こっそりとずっと読んでます(笑)これからも応援してます！ (2022年5月4日 23時) (レス) @page12 id: 8779dd4f89 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：狐姫 | 作者ホームページ：https://mobile.twitter.com/kohime_yume
作成日時：2022年4月27日 20時
