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122.約束と罰 ページ22

「うっ…」



 ダメだ…肩からの出血が多い。

 もやがかかったように視界が歪んでいく。



「花子…さん…

 お願いが…あるんだけど…

 私のポケットから手ぬぐいを…」



「て、手ぬぐいですね…!!

 分かりました…!!」



 花子さんは私のスカートのポケットから

 手ぬぐいを取り出すと、

 急いで止血しようと慌ててそれを広げた。



 朧げに彼女の手元を見ると、

 慌てているからか、流れる出血の量で怖くなったからか、

 指の先まで小刻みに震えていた。



 その様子に気がついた杏寿郎はこちらに駆けてきて

 私の隊服のボタンに手を掛けた。



「…煉獄様!?何を!?」
 


「傷が深く、出血が多い。

 傷口を確認して直接圧迫をする。」



 彼は手際よく隊服を脱がせると

 シャツを脱がせる前に私の耳元で問うた。



「A、すぐに手当てを行う。



 …この下は?」




「ありがとう…肌着を着ているから…大丈夫…」
 


「うむ。身体、辛いだろう。目を瞑っているといい。」




 彼に言われた通りに瞼を閉じると

 視界から入ってくる情報がなくなり、

 嗅覚と聴覚が研ぎ澄まされた。




 血の匂いに混じって、大好きな杏寿郎の匂いがする。


 抱きしめられた時に感じる彼の匂いだ。




 近くでは花子さんの啜り泣く声が聞こえてきて


 右手には相之助くんだろうか。

 
 力強く私の手を握ってくれている。




「Aさん…私のこと怒ってください…

 叩いてください…そうでもされなくては

 私は…私は…自分自身を許すことが…できない…」



 花子さん…



「ひとつだけ…怒るとすれば…

 約束を破ったこと…かなあ…」



「約束…」



 あまり杏寿郎には聞かれたくないことだよね。

 私は花子さんに私の口元に耳を近づけるように言った。




 彼女が私の口元に耳を寄せたのを確認すると

 私は二人に聞こえないように小さな声でこっそり囁いた。



「任務の前に…言ったでしょう?

 私情は持ち込まない…こと…

 正々堂々と…勝負すること…



 花子さん…約束…破ったから、罰…ね…」




「罰…?」




 薄目を開けると、花子さんが身体を起こして

 不安そうな顔で私を見つめている。


 私は安心させるように微笑んで彼女に告げた。




「今度の…非番の日に…私と甘味処へ行くこと…

 約束…ね…」



 

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設定タグ:煉獄杏寿郎 , 鬼滅の刃 , 夢小説   
作品ジャンル:アニメ
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狐姫(プロフ) - misakimiさん» misakimiさん、コメントありがとうございます!夜空に咲く花のシーンは、私自身お気に入りのシーンなので、そう言っていただけて、とても嬉しいです!ありがとうございます。 (2022年6月12日 20時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)
misakimi(プロフ) - 夜空に咲く花を背にした二人の情景が浮かぶ綺麗な文章にも癒されました。 (2022年6月12日 18時) (レス) @page44 id: cb1d4026ae (このIDを非表示/違反報告)
misakimi(プロフ) - ストレートに伝えて下さる煉獄さんに、またまた癒やされました。本日もご馳走さまでございます! (2022年6月12日 18時) (レス) @page43 id: cb1d4026ae (このIDを非表示/違反報告)
狐姫(プロフ) - エリスさん» エリスさん、応援ありがとうございます!ずっと読んでくださっているだなんて感激です♡ 更新の励みになります!ぜひ、最後までお付き合いくださいませ。 (2022年5月5日 0時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)
エリス(プロフ) - 第三弾おめでとうございます^ ^こっそりとずっと読んでます(笑)これからも応援してます! (2022年5月4日 23時) (レス) @page12 id: 8779dd4f89 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:狐姫 | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/kohime_yume  
作成日時:2022年4月27日 20時

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