淡紅舞う【煉獄杏寿郎】

38.己と向き合う ページ38

炎の呼吸


　肆ノ型


　盛炎のうねり…！！





「かなり精度が上がってきたな！見事だ！」





「うん！ありがとう！」





　杏寿郎に肆ノ型の稽古をつけてもらいはじめてから

　6日目となった。





「もう肆ノ型について、俺が教えることはないな！」





「杏寿郎にはまだまだ及ばないけれど、

　戦いで通用するくらいにはなれたかな…」




　杏寿郎は私に手ぬぐいを渡すと、縁側に腰をかけた。




「十分だろう！よく頑張った！」




「良かった…！それでは、次は伍ノ型を…」




「それはできないな。」




　え…？




「どうして？私はまだ…！」





　縁側に座る杏寿郎に近づくと、



　彼は私の手を引いて隣に座らせた。




「杏寿郎？」





「A、己の身体と向き合うんだ。


　技を多く会得することが全てではない。」





　身体と向き合う…





　私は自分の胸に手を当て、ゆっくり目を閉じる。






　大きく波打つ鼓動




　震える手



　

　これ以上の技に私の身体は耐えられる…？




　できたとして、次の攻撃に繋ぐことはできるのか？




　次に繋ぐことができずに隙を作れば、




　自分はともかく、




　助けようとした人間までも


　被害に遭ってしまうかもしれない。







　私は一つ息をつくと、




　隣に座る杏寿郎の目をまっすぐに見つめた。





「自分の身体のことなのに


　自分が一番分かっていなかったみたい。


　情けないけど、私の身体はきっと…


　肆ノ型で限界なのだと思う。」





　悔しいなあ…



　

　庭先には桃色の弁慶草が静かに咲いていた。





「確かにAの現状では

　肆ノ型以上は難しいのかもしれない。


　しかし！

　君の技を繰り出す速さ、切り替えの身のこなしは

　他の隊士に比べて優れたものだと思う！」





　すると突然、

　杏寿郎は私の両肩を掴んで前のめりで告げた。




「そうだ！君は連続攻撃に長けているのかもしれぬな！」




「れ、連続攻撃？」




　少々興奮気味の杏寿郎は

　鼻先が触れるくらいに距離が近い。




「うむ！一太刀の威力が最大でなくとも、

　連続攻撃ができれば鬼に隙を与えず、

　その勢いのまま仕留めることも可能だろう！」




「なるほど…！少し試みようと思う！」





　私は日輪刀を手にすると、深く息を吸い込んだ。

39.青に舞う紅→←37.欠けた花弁

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す