検索窓
今日:2 hit、昨日:6 hit、合計:94,670 hit

29.心の目で ページ29

人の心は目には見えない。



 目の前にいる人がどんな思いでその言葉を発したのか、


 その行動の背景にはどんな気持ちがあるのか…




 目に見えないものを



 心の目を使って見るんだ。




 

 些細な言葉の言い回しや


 
 声色や表情の違いから



 目や耳で得た情報を



 今度は心の目で見てみる。









「千寿郎くん。」





「はい…」




 身体を離した千寿郎くんは


 泣き腫らした顔で私の目を見つめる。





「さっき槇寿郎様のお部屋に行った時に見えたの。


 敷かれた布団のすぐそば、


 本の隣に写真がいくつも置いてあった。」




「写真…」





 私は千寿郎くんの涙を拭って微笑みかけた。




「槇寿郎様、きっと毎日のように眺めているのね。


 大好きなんだね。」




「僕は幼くてよく覚えていませんが…


 兄の話だと父と母はご近所から言われるほど


 仲が睦まじかったようです。


 父は母のことを心から慕っていたと。」




 千寿郎くんは目を伏せて微笑んだ。




「大好きなのは瑠火さんのことだけではないと思うよ。」




「え?」




「槇寿郎様が見ていたのは、


 瑠火さんとの写真だけじゃない。


 杏寿郎の写真や、千寿郎くんの写真もあったもの。」




 千寿郎くんの手を取って


 伝わるようにと包んだ手に祈りを込める。




「千寿郎くんのことも大好きなんだよ。

 
 ぶっきらぼうに見えるかもしれないけれど、


 本当は心から大切に思っているんだと思うよ。


 瑠火さんもずっと…」





「幼いあなたの記憶には残らないかもしれませんね。


 ですが、千寿郎、母はずっと、ずっと…」







「"大好き"なままだよ。

 いつだってそばにいるよ。」





「母…上…母上!母上っ…」





 私は千寿郎くんの頬を軽く両手でつまんで口角を上げた。




「ほら、笑顔見せて?


 瑠火さんも千寿郎くんの笑顔をたくさん見たいはず。


 たくさん泣いて、泣いて、泣いたら、


 その分たくさん笑おう。」




「Aさん…ありがとうございます。」





 ぐううう〜




 私と千寿郎くんは顔を見合わせて思わず吹き出す。




「えへへ。お腹の虫が鳴っちゃった…

 聞かれちゃって恥ずかしい…」





「お腹空きましたよね!


 ご飯、食べましょう!」




 良かった。笑顔になってくれた。


 二人で笑い合っていると、居間から杏寿郎がやってきた。

30.強くなるために→←28.割れたお茶碗



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (153 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
319人がお気に入り
設定タグ:煉獄杏寿郎 , 鬼滅の刃 , 夢小説   
作品ジャンル:アニメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

狐姫(プロフ) - ハウンさん» ハウンさん、こちらこそお読みいただきありがとうございます!引き込まれると言ってくださり大変光栄です!続編も更新しましたので、引き継ぎお楽しみいただけるよう頑張りますね! (2022年3月1日 22時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)
狐姫(プロフ) - misakimiさん» misakimiさん、ありがとうございます!まっすぐな煉獄さんの深い愛情が表現できていれば…と思います。これからもそんな彼を言葉だけではなく、仕草や態度での表現ができるように努めたいところです! (2022年3月1日 22時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)
ハウン(プロフ) - 素敵な作品を作っていただきありがとうございます!ものすごく感情移入してしまって胸が締め付けられるくらい引き込まれました!続編楽しみにしてます! (2022年2月28日 23時) (レス) id: 065a2165a6 (このIDを非表示/違反報告)
misakimi(プロフ) - 今日も煉獄さんが素敵だ。押し付けがましいところは一切なく、ただただ彼女の幸せを願い笑顔を作れる彼は本当に素敵。 (2022年2月28日 21時) (レス) @page50 id: cb1d4026ae (このIDを非表示/違反報告)
狐姫(プロフ) - misakimiさん» 彼はあまり内緒話など出来なさそうですよね(笑) 巧いだなんて言っていただけて…嬉しすぎて今夜は幸せな気持ちで眠れそうです〜!いつもありがとうございます。 (2022年2月26日 21時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:狐姫 | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/kohime_yume  
作成日時:2022年2月5日 21時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。