＃134『美しく育った』 ページ48
貴女の娘は美しく育っている。
貴女と同じ燃えるような赤髪、特徴的な隈。
顔立ちは似てないけど、本当に綺麗。
辻村は息を吐き徐に口を開いた。
「いいわ･･････貴女の母親は美しかった。そして･･･誠実な人だった」
辻村と朔の母親は知り合いだった。
同じ影に潜む異能力生命体を操る異能力を持つ者同士、仲が良かったのだ。
「あの人が、裏の人間だなんて･･････あの人が死ぬまで知らなかったわ」
辻村はできるだけ感情が表に出ないよう毅然に話した。
「私が言えるのはそれぐらいだわ･･････あの人には謎が多かったのよ。そして綺麗なロシア語を使う人だった」
そうですか、と朔は目線を下げ図書館の絨毯を見た。
「でも何故いきなり?」
辻村の質問に朔は消え入りそうな声で答えた。
「母親の軛から解き放たれたい･･･ので」
朔はポツリ呟いた。
「夢で懐かしい感じのする･･････人が出てきたんです」
朔は顔の表情を緩ませた。
「その人の事を思いださなければならない、気がしたんです」
「軛、は大袈裟ですけど･･････」
朔は苦笑いを零した。
何時もの張り付いた笑みを浮かべる朔では無かった。
どんな人でも結局人の子なのだ。
「それはいい心掛けだわ･･････でも、母親の事を思い出すのは得策では無い」
「何故だ」
今まで黙っていた綾辻が口を入れた。
「私は彼女から亡くなった後、手紙を貰ったの」
自分が亡くなった後私に届くよう細工してね、辻村は付け加えた。
辻村の口調は温かみを失せていた。
そこに居るのは異能特務課を影で取仕切る局長であった。
「自分の事を娘に言わないでくれと」
「“自分の柵に囚われ欲しくないから”」
辻村の姿に夢の中に出てきた母親らしき人に重なった。
「母は･･････母は、何を背負って･･････生きていたのですか」
朔は呆然としながら言った。
顔から表情が消えて行く気がした。
「私の口では言えない。でも一つだけ言えるわ。知らない方がいい」
辻村は表情が消え失せた朔に言った。
「これは、貴女の為なのよ」
出来の悪い弟子に諭すよう辻村は言った。
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飛沫(プロフ) - hurukawaさん» いえいえ、すみません。是非最後まで見てください。 (2021年1月15日 18時) (
レス) id: 06a707eb14 (このIDを非表示/違反報告)
hurukawa - 見れました！ありがとうございます！ (2021年1月15日 18時) (レス) id: be99c0bfdf (このIDを非表示/違反報告)
飛沫(プロフ) - hurukawaさん» ご指摘ありがとうございます。こちらの不手際で非公開になっておりましたので、それを解除しました。見れるようになれたと思います。すみませんでした。 (2021年1月15日 18時) (レス) id: 06a707eb14 (このIDを非表示/違反報告)
hurukawa - #96がないです (2021年1月15日 17時) (レス) id: be99c0bfdf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：飛沫 | 作成日時：2020年3月16日 15時
