#90『監獄入れられた先輩』 ページ5
そして、朔は医務室のベッドから降りた。
枕元には太宰に取り上げられていた脇差があった。
それを何時ものように腰に差し、医務室から出た。
そして、太宰が居る屋上に向かった。
「太宰さん」
「あ、朔君おはよう」
そこには予想通り太宰が居た。
大方、敦を探しているのだろう。
「太宰さん。中島さんと泉さんは?」
朔の質問に太宰は苦虫を噛み潰したような顔になった。
「敦君はフィッツジェラルドに捕らえられ、鏡花ちゃんは軍警に捕まったよ」
……此処までは順調に事を運んでいる。
「あと、朔君って安吾のこと知ってるの?」
朔は戸惑いながら答えた。
「え、はい。探偵社という職場を紹介して下さったのも坂口さんですし……」
太宰は目を細めた。
太宰が思い出しているのは安吾との会話だ。
『彼女はどうですか?』
『彼女?』
『萩原朔、ですよ』
『ああ、朔君ね。今寝てる』
太宰がドライブに安吾を誘った直後の会話だ。
『で、朔君がどうしたの?』
『不審な動きを見せてませんか?』
『特には無いけど……まるで彼女が間諜だという口振りじゃないか』
『太宰君は知らなかったようですが……彼女は間諜の可能性があるため、監視目的で探偵社に彼女を入社させました』
『え……』
太宰は単純に驚いた。
朔は太宰が入社する1年前に入社した。
朔は一応太宰の上司だ。
三年間朔は監視状態に置かれている。そしてこれからも。
『彼女が不審な動きを見せた時の射殺許可も探偵社に降りてます
朔は自身の仲間に殺されるかもしれない。突然掌を返され、自身の命を奪われるかもしれない。
可哀想な子だ。
突然黙った太宰を朔は不思議そうな顔を見た。
「太宰さん?大丈夫ですか?」
その時、屋上の扉が開いた。
入って来たのは国木田だった。
朔を見ると目を開いた。
「……大丈夫なのか」
「はい」
国木田は朔の返事を聞くと自身のワイシャツのボタンを開けた。
「こいつの意味を教えろ」
太宰と朔は目を見開いた。
国木田の首筋に映っていたのは禍々しい手形。
其れは敦を苦しめたものだ。
「……どうしましょうか?」
そもそも朔は夢野久作の異能力詳細を知らない。知っているのは精神操作の異能というぐらいだ。朔は打つ手なしと、太宰を見た。
太宰は面白い玩具を見つけたように笑っていた。
此奴何かに企んでる。
朔は悟った。
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飛沫(プロフ) - hurukawaさん» いえいえ、すみません。是非最後まで見てください。 (2021年1月15日 18時) (レス) id: 06a707eb14 (このIDを非表示/違反報告)
hurukawa - 見れました!ありがとうございます! (2021年1月15日 18時) (レス) id: be99c0bfdf (このIDを非表示/違反報告)
飛沫(プロフ) - hurukawaさん» ご指摘ありがとうございます。こちらの不手際で非公開になっておりましたので、それを解除しました。見れるようになれたと思います。すみませんでした。 (2021年1月15日 18時) (レス) id: 06a707eb14 (このIDを非表示/違反報告)
hurukawa - #96がないです (2021年1月15日 17時) (レス) id: be99c0bfdf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:飛沫 | 作成日時:2020年3月16日 15時