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#111『暴く者、守る者』 ページ26

「太宰さんは・・・・・・ポートマフィアの幹部ですよね」


朔は恐る恐る口を開いた。


「・・・・・・まあね」


再び沈黙が場を支配した。


「何故辞めたのですか?」


朔は昔――――太宰がポートマフィアの幹部だと知った時から――――聞きたかった。



太宰は目をふせた。
男にしては長い睫毛が影を映した。
悲哀に満ちた顔だ。


「・・・・・・友人が言ったのさ『人の救う側になれ』と」



絞り出すような声だ。太宰は今でも泣きそうな顔だ。



「・・・・・・そうですか」


朔はパソコンを操作しながら返答した。


「君は何故此方に来たんだい?」


太宰は朔を見た。
朔は視線を太宰の向けたが、すぐにパソコンに戻した。


「太宰さんはどうしてだと思いますか?」



「……」


質問返しに太宰は考え込む。

此処で朔に言って見ようか。

『君は()かい?』と

太宰は意を決して口を開く。

「君は鼠かい?」


朔は目を細める。


「どういう意味ですか?」


「『魔人』の手先かい?という事だよ」


太宰は朔の動きを観察する。動揺している所は無い。


「……もし、そうだとしても言う筈がないでしょう」


「まあ、それもそうだね」


太宰はあっさり引き下がった。証拠が無い今朔の口を割る事は不可能に近い。

でも、確実に朔は鼠―――魔人に関わりがあるような気がした。

本質が魔人そのもの。


……まあいい、その仮面をいずれ外してやる


太宰は表情変化が薄い朔の横顔を静かに眺めた。


……潮時かな


一方朔は諦めが心を支配していた。

多分、太宰は朔の正体に気づいている。

証拠が無いため糾弾できないだけで、もう確信を持っているだろう。

でも、所詮朔は彼の人の手駒の一つでしか無い。

だから、朔が鼠だと分かっても何もできやし無い。

朔はそう思っていた。

だが、鼠と言っても彼の人の側近、次代頭目とも謳われる朔の脳にはこの世界のありとあらゆる情報が詰まっている。

朔の口を割らせたらこの世界の中枢情報も簡単に手に入る。

他組織からしたら喉から手が出る程欲しいものだ。

だから、正体がバレたとしても簡単に処刑されない、という理由で朔を彼の人はヨコハマに送り込んだ。

朔はそれを知らない。

自分自身が、どれだけ重宝されるものかを。


「朔君、敦くんの潜入が成功した」


太宰の言葉に朔は自身のヘッドホンの通信機能をオンにした。

#112『美しかった白鯨』→←#110『駒』



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飛沫(プロフ) - hurukawaさん» いえいえ、すみません。是非最後まで見てください。 (2021年1月15日 18時) (レス) id: 06a707eb14 (このIDを非表示/違反報告)
hurukawa - 見れました!ありがとうございます! (2021年1月15日 18時) (レス) id: be99c0bfdf (このIDを非表示/違反報告)
飛沫(プロフ) - hurukawaさん» ご指摘ありがとうございます。こちらの不手際で非公開になっておりましたので、それを解除しました。見れるようになれたと思います。すみませんでした。 (2021年1月15日 18時) (レス) id: 06a707eb14 (このIDを非表示/違反報告)
hurukawa - #96がないです (2021年1月15日 17時) (レス) id: be99c0bfdf (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:飛沫 | 作成日時:2020年3月16日 15時

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