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ブレイクスペースでコーヒーを清澤の分も淹れると、カップを二つ手に持ってデスクに戻る。一つを清澤に渡し、Aは自分の分に口をつけながら、クッキーを頬張った。ホロリと口の中で砕けるクッキーはさすが鏡月堂、と言いたくなる食感と味で、五枚入りの小包みは一瞬にして無くなった。
 隣で食べていた清澤も同じだったらしく、Aが食べ終わる一歩手前で仕切りの向こう側から「もうなくなっちゃった」と残念そうな声が聞こえてきて、内心微笑む。

 Aは鏡月堂のクッキーを食べ終わると、仕事に勤しんだ。
片付ける書類と提出するものを最初に終わらせると、イベントの展示に関しての電話をして確認を済ませ、確認確定の書類を作成しPDFでメールに貼り付けて送信。作家側にもそれを送ってから電話を一本入れて補足を口頭で伝え、当日お願いしますと事前の挨拶をした。

 それが終わると、今度は各書類のチェックに。
先程の作家が今度の月刊誌に特集が組まれる。そこでの対話形式のインタビュー記事のチェックを行い、ライター側にOKを伝える。

 そんなこんなで、仕事を終えた頃には六時半をとうに過ぎ、午後七時になろうかとしていた。清澤はまだ仕事をしているらしく、ちょうど切ったところの受話器を静かに置くと、ほっと息を吐いていた。

「香里、今日あとどれくらい?」
「まだやってく。大平先生のイベント企画のチェックとか終わってなくって」
「大平先生、売れっ子だもんね。大変だね」
「うーん、仕事量としてはそんなに苦じゃないんだけどね。私、大平先生(あの人)についてからも別に仕事量そんなに変わってないけど、大平先生の仕事は売れるごとに増えるじゃん? そっちのが大変そうなんだよねえ」
「結局、インタビュー記事のあれどうなったの?」
「あ、通ったよ。あれね、よく売れてるみたい。上半期売り上げトップだって」

 デスクチェアを軋ませて伸びをする清澤は、あくびをかみ殺した。
大平(おおひら)(なだ)という売れっ子作家の担当をしている清澤は、彼女と中学高校の友人であり、一人の理解者であるとチームリーダーの加賀野から聞いたことがある。
 Aの働く編集社、紅葉堂(こうようどう)はそれなりの数で売れっ子作家を抱えている。Aもまたその中の一人を担当しているが、大平洋の売れ行きは早期のデビューから右肩上がり。今は紅葉堂と大平洋は切っても切り離せない存在となっている。

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(プロフ) - えっ……天才。 (2018年10月21日 21時) (レス) id: 057c14ed72 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:◎たなは◎ | 作成日時:2018年10月15日 21時

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