#いろんな思い出 ページ6
バイト仲間とは、いろんな事をしたし、ものすごく楽しかった。
春には花見、夏には海やバーベキュー、秋はお店の近所にある神社のお祭りにも行ったし、冬は雪山に飛んでった。
企画立てたりするのが上手な子や、その企画を細かく考えてくれる子、みんなに声かけて盛り上げてくれる子や、意外な特技を持ってる子……。
いろんな人がたくさんいたから、みんなで遊びの計画を立てるのは、本当に楽しかった。
最初は学校の人付き合いで出費がかさんで始めたバイトだったのに、半年も経てば、バイト仲間と遊んだり飲んだり歌ったりするためにバイトする……みたいな状態になってて。
大学のクラスメイトやサークルなんかの人脈しかなかった私が、バイト仲間との付き合いに比重を置くようになるまで、時間は掛からなかったんだ。
そして、バイト先にはいろんな学校の子達がいたから、コッソリその子達の学校に潜入させてもらって。
他の学校の学食が美味し過ぎて、坂田さんと2人で肩を落としてその大学に通う友達を睨んだりしたこともあった。
だからかもしれないけど、4つの季節が巡るのが、あっという間に感じて。
この時が、私の人生の中で一番早い1年間だったように記憶している。
その頃になれば、仲間内でも「さん」とか「くん」とかが外れるようになって。
私は「Aちゃん」とか「A」って呼ばれるようになって、坂田さんは「さかたん」とか「坂田」って呼ばれるようになってて。
坂田さんは、私を苗字で呼び捨て。
私は坂田さんを、さかたんって呼んだ。
『さかたんって変なカンジ』
「え、そう?」
『ん……あんま呼ばれないから』
「そうなんだ……言われそうなのに」
『……なんでよ』
「え、可愛いから」
『ソレ褒めてるん?』
「全力で褒めてる」
『ウソつけ!!』
「うふふっ」
『ほらみろ!!褒めてねえじゃんか!!くち!!ムズムズさせ過ぎだわ!!』
「え〜?本心なのに〜」
『言っとくけど、カワイイって言われて喜ぶ男なんてこの世にいないからな!!』
「え〜?」
そんな風にふざけられる様になったのが私は嬉しくて。
でも、その頃からさかたんの様子がちょっとおかしくなって。
溜息をつく回数が増えて。
微笑み方が儚くなって。
彼女の話をしなくなった。
「何かあったの?」って聞いても、『なんもないよ?』って微笑んではぐらかされた。
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