【wrwrd】翡翠の竜【zm】

Ep.37 ページ39

ﾛｽﾞ｢では、参りましょうか。｣

ロズベルトは私に手を差し出した。
その手を掴み、馬車へと乗り込む。

この日。ついに【幸福の国】へと足を踏み入れることになった。
一体どのような場所なのか…。
不安で心が置き潰されそうになるのを必死に耐えた。


ﾛｽﾞ｢綺麗なピアスですね｣

｢これですか。母から送って頂いたものなのです。｣



耳元に光るエメラルドのピアス。
母から貰ったもの……

ではなく。
3日ほど前、机に置かれていたものだ。

メッセージも何も無く、ただ黒い箱があった。
開けると中にはこのピアスが入っていた。


(用意周到というか……)


突然、馬車のカーテンが閉ざされた。
ロズベルトは用意していたランプをつける。

ﾛｽﾞ｢この辺りは治安が悪いので…。
あまり見ない方がよろしいかと思わます。｣

｢まぁ、お気遣いありがとうございます。｣


ガタガタと揺れる馬車。
それと共に動いたカーテン。
外の景色に驚愕した。

｢っ……｣

あまりにもひどい景色だった。
当たり前のように人は倒れていて。
当たり前のように殴りあっていて。
それでいて何故か外は紫色なのだ。

酷く甘い匂いが馬車に立ちこめた。

ﾛｽﾞ｢あぁ…慣れてないと辛いですよね。この匂い。でも大丈夫です。｣

すぐ慣れますから。
そう告げた顔は狂気に充ちていた。

私はできるだけ匂いを吸わないよう息を止めた。

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