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ぱたん。音を立てて閉められた扉を尻目に私は毛布に抱き付く。
……毛布、なんて言えないか。ただの襤褸切れに抱き付き、その勢いのまま床に寝転んだ。


「何してんの?」
「え?いやぁ、外寒かったんだよ〜!」
「それは猫犬が薄着だから!」
「軍曹とか厚着だもんね!」


内側もふもふのパーカーを着た軍曹と、上は薄手のブラウス一枚の私。
今思うとこんな格好で冬の早朝に外出などとんでもないことである。けもさんだって袖で指先までを隠しているというのに。
耐性がついているだとか、元々寒さに強い身体だとか、別にそういった訳ではないのだが。寒さなどいつまで経っても慣れやしない。

長年の使用で磨耗したゴムを手首に通し、バケツの水面に映り込んだ自分を見ながら髪を結い上げる。さっき梳いてもらったからだろうか、いつもより絡まりの少ない髪は結びやすかった。


「そういや二人って同時に起きたの?」
「んー……私がこっそり後付けたってのが正しいかな!」
「え、ぐんちょ怒ってた?」
「驚かしたら驚いてた!」
「そりゃ驚くでしょ!」
「ちなみに怒られなかったよ?」
「怒る気も失せるよ」


そう言ってけもさんは肩を竦めて見せる。
そんな光景に二人で目を合わせて同時に吹き出し、一頻り笑った後彼女は唐突に心配そうな顔をした。


「ぐんちょ平気かなあ」
「軍曹だし大丈夫でしょ、強いし!」
「いやそうじゃなくて、ああいう人種好きじゃないじゃん?けもさんもだけど」
「シスターのこと?私会ったことないからなー……」
「猫犬はあんまり外でないで」
「過保護はダメ!」


私の過去を知る二人は、傷付けられたりしないようにと私を最大限庇護してくれる。でもね、それじゃあダメなんだよ。

軍曹だってけもさんだって辛かった筈なのだ。私だけがいつまでも守られてばかりなどではいられない。少し寂しそうなけもさんの表情から罪悪感に苛まれる傍ら、私は精一杯の笑顔で話を続けた。


「シスターってどんな人?いっぱいいるの?」
「教会にいる人は大体みんなシスター呼び。一言で言うなら偽善者」
「あちゃー」
「ね、だから心配なんだよ」
「でも軍曹、偽善者は吐き気がする程嫌いだけど楽しめるから好きって言ってたような」
「そりゃそうだって」


相反した不可解な言葉に難なく理解を示した彼女に、私は小首を傾げて訊ね返す。
どういうことなのか、と。


「だって嫌いな人の方が、壊すの楽しいでしょ?」

.

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作者名:瑶杞 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2018年12月26日 19時

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