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時計の針は丁度午前三時半を回ったところだった。そろそろ行くか、と重い腰を上げる。刃渡り12cmの両刃ナイフ二本とグロック17を一丁手にし、ソファーですやすやと仮眠を取っていたつかさんに声をかける。
「つかさん時間やで、起きてぇな!つーかーさーん」
「……ん、あにき?」
「おん」
「もう時間か……」
彼女が眠たげに眼を擦るのも無理はない。彼女は大抵殺人に関わろうとしない為、そういった仕事は彼女が寝ている夜更けに終わらせることが常なのだ。
欠伸を溢したつかさんはゆっくりと、しかしちゃんとした足取りで買ってきたビスケットとチョコレートを袋に詰めていく。
様々な事態を想定して念のために小太刀を持たせ、用意が整った自分と彼女は足早に夜の街を駆け出した。
「……ここやな」
「うん、合ってる。……影は三つ、気配は薄いから多分寝てるよ」
「それは良かったわぁ」
つかさんに外で待つよう伝えた後、あくまで静かに扉を開ける。これでも真冬の深夜、長いこと開けていては流れ込んでくる冷気で気付かれるかもしれない。
たてつけの悪そうな木製の扉をそっと閉め、襤褸切れにくるまる三つの塊を見遣る。
些細な、違和感。これでも人間は数多く殺してきたのだから人体など見慣れている。しかし何というか、この三つは不自然に小さいのだ。例えるならばまるで子どものような__。
「……まさか、」
ぺらり、と毛布を捲れば予想通りの小さな身体、そしてその身体に相応な童顔。
唐突に理解した。ただのホームレスならわざわざ殺さずとも仕事を与えるなり何なり可能だろう。殺すなら殺すで自分の部下にでも頼めばいい。……逆だったのだ。仕事も出来ないし、部下に頼むと足が着きやすい。大人ならまだしも子供を殺したとなれば評判はがた落ちするだろう。
だから、領主は外部に頼むしかなかったのだ。
だが仕事は仕事。ならばそれが赤子だろうが子供だろうが関係はない。
そう思って一番近くにいた白髪に刃を振り翳した。
「っ、……!?」
ぱちっ、とその子の瞼が開かれ、つかさんとはまた少し違った黄色の瞳が自分を捉えた。そして後悔する。気付かれても気にせず刺せば良かったのに、何故か刃を止めてしまっていたことを。
彼は寝起きとは思えない程の俊敏さで起き上がる。しかしそこを退くことはなく残りの二人を庇うように手を広げ、鋭い視線で自分を睨み付けた。
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