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軍曹の方は心配だが何せあの軍曹、簡単にやられることはないだろう。何より自分の役目は彼を心配してまごつくことではない。
とりあえずの目的は猫犬よりも先に家へ辿り着くこと。隠れて付いていってました、なんて知られたらあの猫犬のことだ、拗ねるに違いない。
頬を膨らませてそっぽを向く彼の姿を想像して笑いを上げる。周りの人が気付かないくらいに、小さく。
「猫犬に見られずに入るの面倒だな。ぐんちょ怪我してないかな、手当ての準備一応しとかなきゃ」
大通りを小走りで進む猫犬をこっそり追い抜かし、彼が家に着いた時にはなに食わぬ顔でお帰りを言わねばならない。
そういえば家に救急箱ってあったっけ。無かったような。包帯とエチルアルコールくらいはあったと思うのだが。
「……ここまで来たら猫犬も大丈夫でしょ」
後は真っ直ぐ行って次の角を曲がれば終着点。曲がっていくよりも斜めに行った方が速いのは当然だ。だから私は猫犬の後ろ姿を横目に、路地裏を走り抜けることにした。
そうすれば大通りを行く彼には見えもしない。
そうして無事に辿り着いた家。意気揚々と開いた扉の先で、誰もいないそこへ私は声を上げた。
「ただいま!」
「お帰りーけもさん」
「……うわあぁああ!!」
「け、けもさん!?」
「…………びっくりしたぁ……ぐんちょか……」
「こっちはけもさんの声にびびったわ」
何故軍曹がここにいるのかという疑問はあるのだが、それよりも本当に驚いた。死ぬかと思った。というか寿命は縮んだと思う、割と本気で。
「で、ぐんちょ何でいるの?」
「思ったより早く終わっちゃってなー、屋根伝いに帰ってきた」
「それでか……てかほっぺ!赤くない!?」
「顔に一発もらったから」
「そんな当然のように……」
「大体は腹とか胸元やってんけど」
「ちょっと待って」
心配を通り越して最早呆れた。最近見てなかったから忘れてたけどこの人バーサーカーでウォーモンガーだった。
何事もなさそうにする彼を半ば無理やり座らせ、無事置いてあったエチルアルコールをぽんぽんと当てる。うっすらとだが血の跡が残っていた。
「無理しないでね」
「するかもやけどちゃんと帰ってくる」
「……彼の帰宅を待ちますか」
「そうですねぇ」
とん、と肩を寄せて猫犬を待つ。チーズとミルクを持ち帰ってくる彼を褒めちぎってやろう。いつもより少しだけ豪勢な、そんな夕餉のお話。
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