三十六、「乞い願う」 ページ40
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おどろおどろしい気配は施設の中からもれ出すかのように感じ取れる。フシギにも手が震えていた。
これは前に、リョウメンスクナが現れたときの。それと酷似している。
リョウメンスクナ、あいつがいる。ゆーじくんの体を乗っ取って、ここにいる。
「あれ、?」
感じ取った気配の一つが分散したかのように消えた。私の目と鼻の先にあったはずなのに、彼方遠くに飛んでいってしまったかのように無くなった。
ぽっかりと穴が空いた部屋の奥で、ぐずぐずと消えかけた残骸を見た。
あれは、あれは。私が黒の穴に落っこちたとき最後に見た、「特級呪霊」だったもの。
なら、じゃあ、彼は、ゆーじくんは?
「ッめぐみん!!!」
二つの特級の気配に引きつけられすぎた。
ゆーじくんは、リョウメンスクナはここにいない。
消えた瞬間に気づかなきゃいけなかった。リョウメンスクナは、めぐみんのところにいる!
踵を返し、来た道を全力で駆け抜ける。
遠くに悍ましいほど膨れ上がった気配を感じた。それは見知った存在の近くに現れそして、めぐみんを、めぐみんお願い、お願いだから無事でいて。
施設から抜け出せば吹き飛ばされたかのように削れた地面と色濃く残る呪力の残穢。
当事者達はたった今、ほんの数秒のうちに遠くへ消えた。
空を見上げて、目を開く。
めぐみんとゆーじくん、ではないあれは、リョウメンスクナ!あいつがめぐみんと戦っている!
刹那、衝突音。リョウメンスクナの拳がめぐみんを捉える。が、めぐみんの式神である「ぬえ」が翼でめぐみんの身体を覆って防御。でも簡単に吹き飛ばされた。
とにかく走る。走って、ただ無事であれと願い、走る。
見えた。とんでもなく禍々しい殺意。
脳が何かを理解し情報を処理する前に、私はいつものように思考を放棄して木刀をぶん投げた。
「止まって見えるぞ」
難なく。リョウメンスクナはまるで蚊を追っ払うかのような緩慢とした動作で私の木刀を弾き落とした。
からんからん、と軽い音を立てて木刀が転がる。
「オマエに用は無い。今直ぐ踵を返し俺の視界から消えるのであれば見逃してやろう」
「ウソつき。後ろむいたらすぐころすって、その目が言ってる」
「ほう、稚児のような風貌の割に随分と聡い奴だ」
「ゆーじくんを返せ」
リョウメンスクナの胸に、ぽっかりと穴が空いている。
止め処なく流れる血。でもリョウメンスクナは笑ったままこちらを見ていた。
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うたプリ大好き?(プロフ) - 続き気になっています この作品はもう更新されないのでしょうか? (2021年1月4日 16時) (レス) id: 48370e286a (このIDを非表示/違反報告)
ぱんこ(プロフ) - 葵羽〜best friend group〜さん» 葵羽様、コメントありがとうございます!完全に私の趣味ですがお付き合い頂けると幸いです笑 そしてこの作品含め他の作品にもたくさんコメントして頂いて本当にありがとうございます!とても励みになります。これからも頑張りますのでどうぞよろしくお願い致します! (2020年10月19日 23時) (レス) id: d2028c3fb2 (このIDを非表示/違反報告)
葵羽〜best friend group〜(プロフ) - 夢主ちゃんがすごく可愛い…相変わらずぱんこさんの作品、面白すぎます!何度読んでも飽きません!更新頑張ってください!応援しておりますっ! (2020年10月19日 22時) (レス) id: bccf6ec4c9 (このIDを非表示/違反報告)
ぱんこ(プロフ) - みわさん» 完全に自己満な上幼女(?)みたいな夢主ですが、そう言って頂けて嬉しいです。励みになるコメントありがとうございます!これからも頑張ります。 (2020年10月18日 22時) (レス) id: d2028c3fb2 (このIDを非表示/違反報告)
ぱんこ(プロフ) - 緑緑さん» 完全に私の趣味です(笑)幼女を求めて作ってたら幼女擬きが出来上がってぽかんとしました。これからも頑張ります! (2020年10月18日 22時) (レス) id: d2028c3fb2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぱんこ | 作者ホームページ:
作成日時:2020年10月18日 19時