【薄桜鬼】めったに咲かない花＿僕らと君の満月日＿ (ページ42)

今日:1 hit、昨日:2 hit、合計:172,552 hit

43 ページ42

一瞬驚いた。

顔が、ここにいる女の子ととても似ていたからだ

ニコニコと笑いながら立っている

…久しぶり？

正直言ってこの子の事は知らない

「…あの…誰ですか？」

首を傾げながら聞く

それと、敬語とやらを使ってみた

目上の人や始めてあったりする人に使う丁寧な言葉らしい

そういう風に左之兄さんが教えてくれた

「…やっぱり覚えてないかぁ」

少年は悲しそうに声を弱らせる

「…え？」

「…術、使ったでしょ」

意味が分からない。なんの事だ。

この子はなにを話しているんだ？

少年はフフ、と笑うと口を開く

「とりあえず、部屋にいれておくれよ。こんな雨の中来たんだから疲れちゃって」

「…あ、うん…どうぞ」

僕が一歩下がると、少年が部屋に入ってくる

思えば部屋に人をいれたのは初めてだろうか

…あ、でも沖田が入ってきた事あった

でも土方にこっぴどく怒鳴られて、挙げ句の果てに引きずられて行ったっけ

少年は、お邪魔しますとでも言うように小さく礼をしながら部屋に入る

＿＿＿

「…本当になにも覚えてないんだね」

今までの記憶と少年の姿をリンクさせるように必死に思い出そうとする

本当に誰なんだろう

今、少年と私は対面するように座っている

「…ごめん、お茶とか無くて」

「ううん、良いんだ。気にしないで」

新選組はこういうお客がくる時、いつもお茶とか出していたのを思い出す

正直、お茶とか入れれないし

あの女の子は多分今頃、幹部の皆の為に、くるくる働いているのだろう

引っ張り出すのもあれだし

話しかけるの苦手だし

「…」

「あ、そうだ。自己紹介がまだだったよね。」

僕が色々と考えていると、結構な沈黙が続いたのか少年が言葉を発する

「僕は、南雲薫。

よろしくね」

「あぁ、南雲薫……＿＿ね＿＿＿…」

…南雲……

……薫？

どこかで…

…か…お……る？

「…っ…？」

身体中がビリビリする

駄目。こいつに近づいたら

本能的に察した

でも思考は止まってくれなくて。

一気に身体中を思考がくぐり抜けるような感覚

暗い…暗くて…

闇みたいな

瞳…

確か…

顔を上げると、

ニヤリと口角を上げる

"そいつ"の姿があった

「…やっと思い出してくれた？」