【薄桜鬼】めったに咲かない花＿僕らと君の満月日＿ (ページ32)

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斎藤side

「失礼します」

＿＿＿＿＿パタン

申し訳なかったが、確かに身体は疲れを感じていた所なので副長の言葉に甘えることにした。

そういえば、以前ここを出た時は春風がそよぐ季節だった

今ではもう外の草木達、自然や街並みさえも梅雨の時期に入ろうとしている

自分の部屋に旅道具を置き、風呂場へと向かう

こんな昼間からは誰も風呂場周辺にはいないはずなのだが

途中、見慣れない隊士に会った
新しく入った隊士なのだろうか
身長は平助ほどだ

「…こ……ちわ…」

「あぁ」

聞き取れるか聞き取れないかくらいの小さな声で挨拶をし、

チラリと目を合わせるとすぐ下に目線を向ける隊士

俺が風呂場の戸を開けようとすると、

また先ほどの隊士がこちらへ向かってくる
表情はごく真剣だ
歩くだけでそんな真剣にならなくても

何か話しかけられるのかと思い身構えていると、
俺の方を見向きもせず、通り過ぎ、突き当たりの角を曲がって行った

いや、そっちは行き止まりのはずだ

横目で見ていると思った通り、同じ角から現れる隊士

探し物だろうか

「おーーい！いるかーー？」

向こうから平助の声がする
その声に反応する隊士

「……」

「あ、見つけた。また迷ったのか？」

「……別に」

下にサッと顔を下ろす隊士に、苦笑いをする平助

「あ、そうだ、仕事の帰りに団子買ったんだけど。
一緒に食わねー？」

「……団子…」

「おう、こっちこっち」

平助は隊士の手を取ると、そのまま走って行ってしまう

隊士の方は平助に手を引かれたまま、俺の方を見るとペコリとお辞儀をした

俺も礼をして返す

平助と親しい仲になるということはそれほどの腕前なのだろうか

そして俺は平助に気づかれず。