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時計の短針はぴったり10を指している。
「お疲れ様でしたー」と気の抜けた挨拶をしながら廉や岸さんを残し、スタッフルームへ戻った。
この店のユニフォームから私服に着替えて、携帯を開き通知をチェックして、スタッフルームから繋がっている裏口から店を出る。
お店は大学の近くで、自宅まで帰るには地下鉄で二駅。
何事もなく駅に着き、改札を通る。
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紫耀「A」
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目の前にある大きな柱に、彼は寄りかかっていた。
「………ゲ。」
紫耀「ゲ、ってなんだよ。お前平気な顔してオレ置いて帰ろうとしやがって。オレが大人しく店で待ってたら泣くとこやったわ。」
「現にここにいるじゃん…」
紫耀「で、Aの家はどっち方面？1番線？」
「に、2番線………」
紫耀「分かった、1番線ね。」
自然な流れで手を掴まれ、なんの迷いもなく1番線の方向に引っ張られる。
「ちょ！2番線って言ってんじゃん！」
紫耀「そんなん嘘ってすぐ分かるわ。どーせオレに家バレないようにしなきゃーとか思っとるんやろ？」
「…………」
紫耀「ハハッ、図星？相変わらずオレにはなんも隠し事できないのな」
1番線のホームにタイミングよく電車が滑り込んできた。
それに手は繋いだまま乗り込む。
紫耀「で、何駅？もう誤魔化せねえよ」
「………二駅先。」
紫耀「それはホントっぽいな(笑)」
ガタンゴトン、と規則的に揺れる電車に紫耀と身を任せる。
たった二駅をこんなに長く感じたのは初めてだった。
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作者名：たまごちゃん | 作成日時：2019年10月13日 18時
