【Fischer's】前途多難な恋だから ** モトキ

帰り道 * 01 ページ21

あの後、皆と別れて警察署に行って、全部が終わった今、真夜中。どちらかと言うと朝の方が近いくらいの時間だ。
色々聞かれて色々話して、緊張が続いたせいか、解放された瞬間に疲れが一気にきた気がした。よく考えると日付も変わって今日はもうクリスマス。昨日までのバタバタな仕事、そして昨日の夜の。
このままの家に帰るのは、お部屋にいるとまた思い出しそうで、帰りたくない。だからと行って、いく場所もない。タクシーを呼んで、人がたくさん居るところに行こう、ネットカフェでもいい。ただ一人で居るのだけが怖くて嫌だった。

タクシーを呼ぼうとスマホを開くと、LINEが一件。

"終わったら連絡して"

モトキくんだ。
本当に優しい人。今日はモトキくんにたくさん助けてもらったな、そんな事を考えながら返信をする。時刻は真夜中、きっともう寝てしまっているかもしれない。でも、お礼は伝えたい。

"今終わりました。さっきはちゃんと伝えられなかったけど、今日は助けてくれて本当にありがとう"

送信。

タクシーを呼ぼうと検索しようとしたその瞬間、モトキくんから電話が掛かってきた。
時間も時間だったので全く予想しておらず、慌てて着信ボタンと拒否ボタンを押し間違えそうになる。落ち着かなくては。

「モトキくん？」

「あ、Aちゃん！お疲れ様！いまどこ？」

「今はまだ、警察署だよ？タクシー呼ぼうかなって思って」

「良かった！俺外にいるから！」

「えっ、外に？？」

自動ドアの向こうで手をふるモトキくんを見つけたと思うと、電話が切れた。文字が声に、声が本物のモトキくんに変わった。

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