【銀魂】ボールパークの恋愛算術

10 ハル ページ10

『いつになくアホ面してんな』




失礼だと怒る気になれず、私は本日何度目かも分からない溜め息をプリントに落とす。そこには最初よりかは大分増えた赤丸の数々。

……しかし、勿論のことバツだってあった。




『明日のテストは出来そうか？』

『それを先生が聞くんですか』




だったらテストを簡単にしてくれと請いたいが、絶対聞き入れてくれないことは目に見えている。だからこそ、私は心配なのだ。

情のカケラも無さそうな高杉先生のテストで、私は本当に90点以上取れるのだろうか。




『まァ、お前はなんだかんだと文句ばっか言ってたからな』




補習のある教室の扉を開く度、開口一番出て来るのは文句ばかりだった。何度辞めたいと彼の前で零したことだろう。

しかしそれを高杉先生は簡単にあしらってしまうため、いつしか私は諦めたのかもしれない。




『結局、数学と先生は好きになれなかったです』




微笑を混ぜた言葉に、彼は片方の眉を下げる。そんな風に表情を変えた先生は珍しく、思わず魅入ってしまった。


そのまま何も言わずに教室を出て行くのかと思えば、扉に手をかけて、私の方を振り返る。





『不安なら……自分が今まで何やってきたのか、考えることだな』




気の所為かもしれないが、そう言った高杉先生の顔が今まで見た中で、一番柔らかかった。慌てて目を擦るも、既に先生は教室を後にしている。



冷たい言葉に隠された小さな温もりは、いつも通り聞き流していたら気付かなかっただろう。

それでも今回気付いてしまったのは、きっと、高杉先生との何らかの距離が縮まったからだ。




「よし」と胸の中で意気込み、私は鞄を肩にかける。教室から大きく足を踏み出せば、もしかしたら大丈夫かもしれない、という謎の自信が生まれた。

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