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Six。 ページ8

狭い。

引っ越しついでに少しデカめのベッドを新調したはずなのに狭い。

寝惚けて上手く回らない頭を必死で回転させて、目を開けるとスヨスヨと心地よさそいに寝息を立てる伊沢がいた。

部屋を見回すと、昨日よりも段ボール箱の数が減っている。


「いつの間に、来たんだ……」


スマホは、朝の6時を示していた。

カーテンを遮光にしたせいで、時間感覚があまりない。

伊沢は、非遮光カーテンを譲らなかったが、仕事のせいで時間の制約がない伊沢からしたら遮光カーテンの方が無駄に惰眠を貪ることが出来るだろう。

全く。社会人初の一人暮らし用の引っ越しは、結局全て伊沢に合わせた条件となってしまうのだった。


背中に回された腕を起こさないようにのけてキッチンに行く。

料理が出来ないわけではない。一人暮らし歴は長いし、スマホという文明の利器があればなんだって出来る。

冷蔵庫から取り出した食パンと卵と牛乳と蜂蜜。

伊沢が買ってきたものだが、私の家の冷蔵庫に入っているのだから私が使ったって構わない筈だ。

卵を溶かして牛乳と砂糖と蜂蜜で混ぜる。耐熱の薄いトレーに卵液を流し込んで切込みを入れた食パンを浸す。

レンジで数秒温めてからフライパンにバターを引き卵液に浸した食パンを焼き始める。


ガチャリ、と扉を開く音が聞こえて振り向くと、寝ぼけ眼の伊沢が、驚いたように立ち尽くしている。


「おはよー」

「お前、なにしてんの」

「もう出来るから座って」

「……おう」


両面に焼き色が付いたのを確認して皿に移して机の上に置く。
バリスタでコーヒーを入れて皿の近くに置くと、伊沢は心底信じられないという顔をこちらに向けてくる。


「お前、料理出来たの」

「これくらいで出来たことになるのなら。それに一言も料理出来ないとは言ってないよ」


キッチンに戻って自分の分も用意する。

あいにく、バリスタは伊沢が持ち込んだものでコーヒーが飲めない私には使い道のないもので、今回が初仕事だったりする。
ついでに紅茶を入れてくれるスペシャルTも持ち込むあたり、抜かりはない。

たまに紅茶とか飲みたいし、と言って持ち込んだスペシャルTはバリスタよりも使われていた。

紅茶と自分の分のフレンチトーストを持って伊沢の方へ行くと、彼はまだ食べていなかった。

それどころかスマホで写真を撮っていて、その姿は昼休みの同僚に重なるのだった。

Seven。→←Five。



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緑の白猫 - お話が綺麗に終わり、伏線回収まで綺麗で、読み終えた時に、清々しさと良い小説を読んだ時特有の多幸感に満たされました。良い作品をありがとうございました。 (2021年4月2日 16時) (レス) id: 41276e8159 (このIDを非表示/違反報告)
たかせ(プロフ) - くぅかなさん» キュンキュンだなんて嬉しい限りです!最後までお読みいただきありがとうございました! (2020年4月6日 14時) (レス) id: 66eef8f813 (このIDを非表示/違反報告)
くぅかな - 一気読みさせて頂きました!クライマックスはもう…熱が出たんじゃないかっていうくらいキュンキュンしてました笑 (2020年4月6日 14時) (レス) id: 8242ba3eb6 (このIDを非表示/違反報告)
たかせ(プロフ) - 藍知さん» こちらこそ、最後まで読んでくださりありがとうございました! (2020年4月6日 11時) (レス) id: 66eef8f813 (このIDを非表示/違反報告)
藍知(プロフ) - 一気に読んでしまいました。素敵なお話をありがとうございます。 (2020年4月6日 5時) (レス) id: 327f8bffcc (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:たかせ | 作成日時:2020年4月4日 12時

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