Twelve。 ページ14
「高木さん、今日も終わらなそう?」
「うん」
「ごめんね、先に帰るね」
「いいよいいよ〜!」
申し訳なさそうに眉毛を八の字にする同僚に手を振ると、同僚は後ろ髪を引かれるようにこっちを振り返りながらも帰っていった。
最近、あの上司は私のことが嫌いなのか全てを私に押し付けているような気がしてならない。
まあ、パソコンの強制シャットダウン時間よりは前に終わるので別に構わないのだけれど。
お先に失礼します。と何人も帰っていく。
あれ、もしかして来週もこの調子で遅くまで仕事すれば約束を反故にできるのでは?
いやいや、仕事に手を抜くわけにはいかないでしょう。
第一、反故になったらなったで次の約束と取り付けてきそうだもんなあ。
やっぱり、伊沢の言う通りにキッパリ断る方が良かったのだろうか……。
急いで仕事を終わらせて、就業時間の約5時間後。どうせサービス残業なんだよなあ。
電車に乗り込んでQuizKnockの動画を見る。
正直、面白すぎて笑い出しそうになってしまうのだけれど、家に帰ると伊沢がいる可能性もあるし、見れるのが電車でしかないのだ。
他の人と大勢で合宿と称している動画。他のグループの子をQuizKnockに引き抜こうとするドッキリ動画。
随分と口が回るものだ。
この人、前世はペテン師かなにかじゃないだろうか。いや、むしろ今世でもやっているのでは?
なんて、動画を見ているとすぐに最寄りの駅に到着する。
そのまま駅で降りて、どうせカレーが残ってるからと帰路につく。
「あれ? 高木さん?」
「あー、えっと、お久しぶりです。福良さん」
前の方から見覚えのある人が来た。
さっきまで動画に映っていた、一緒に仕事もしたことがある福良さんと、そして一緒に仕事はしていないが動画によく出ている河村さんだった。
「お久しぶりです。お家、ここら辺なんですか?」
「あ、はい」
「おい福良、何方だ?」
その河村さんの言葉に、福良さんは軽く謝りながら私の紹介をする。
そして河村さんの紹介もされ、お互いに頭を下げたところで福良さんが「あ」と不穏な言葉を漏らしたのだった。
「高木さん、良かったら晩御飯でも御一緒しませんか?」
「え、いや、それは……」
「おい福良」
「あ、もちろん嫌なら断っていただいても!」
カレー、カレー。
カレーなら別にもう少し置いていても大丈夫だよな?
まあ、最悪、伊沢が食べるだろうし。
「いいですよ」
福良さんが嬉しそうに笑った。
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緑の白猫 - お話が綺麗に終わり、伏線回収まで綺麗で、読み終えた時に、清々しさと良い小説を読んだ時特有の多幸感に満たされました。良い作品をありがとうございました。 (2021年4月2日 16時) (レス) id: 41276e8159 (このIDを非表示/違反報告)
たかせ(プロフ) - くぅかなさん» キュンキュンだなんて嬉しい限りです!最後までお読みいただきありがとうございました! (2020年4月6日 14時) (レス) id: 66eef8f813 (このIDを非表示/違反報告)
くぅかな - 一気読みさせて頂きました!クライマックスはもう…熱が出たんじゃないかっていうくらいキュンキュンしてました笑 (2020年4月6日 14時) (レス) id: 8242ba3eb6 (このIDを非表示/違反報告)
たかせ(プロフ) - 藍知さん» こちらこそ、最後まで読んでくださりありがとうございました! (2020年4月6日 11時) (レス) id: 66eef8f813 (このIDを非表示/違反報告)
藍知(プロフ) - 一気に読んでしまいました。素敵なお話をありがとうございます。 (2020年4月6日 5時) (レス) id: 327f8bffcc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:たかせ | 作成日時:2020年4月4日 12時