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Prologue。 ページ1

恋につまづいたくらいならば、立ち直るのは簡単だ。けれど、一度でも恋に落ちてしまったら、そこから抜け出すのは容易なことではないよ。

アインシュタインの名言だ。


伊沢への恋心を何年も引き摺ってしまっている私にとって、きっとそこからの脱却は容易ではない。

先人の言葉というものは、どうしてここまで正しいものなのだろうか。


三度とした食事も、私たちに甘い関係をもたらすことは無かった。

彼を思って流す涙も溜息も、とどまることはなかった。


ただ、それだけが真実なのだ。


「伊沢は、いま、幸せ?」

「どうしたんだよ。急に」

「何となく」


ベッドでタブレットを弄る伊沢の視線が、こちらを向けばいいと話しかけた。

眼鏡のレンズの奥から覗く瞳に、ドキリとしてしまう。

久しぶりに見た眼鏡姿、久しぶりに食べた料理。
そして、久しぶりに触れた体温。

私にもたらされた見せかけの幸福は、曝け出してはいけない気持ちをどんどんと募らせていく一方だった。


「Aが俺の事好きになってくれたら、もっと幸せかも」

「だから、好きだよ」


あれ以来、彼は私に戯れを言う。

好きな人が手に入らない代わりに、私を代用品に仕立てようとしてくる。

代用品が嫌だと言ったのは彼自身なのに、彼自身はその行動を厭わないのだ。


「はは、じゃあ、幸せかな」


そう言ってキスをしようとしてきて、眼鏡が邪魔であることに気付いたのか、外そうとした。

やめて。外さないで。

私の知らないあなたに、ならないで。

そんな言葉、彼女でもなんでもない私に言う権利はないのだ。

Setting。→



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緑の白猫 - お話が綺麗に終わり、伏線回収まで綺麗で、読み終えた時に、清々しさと良い小説を読んだ時特有の多幸感に満たされました。良い作品をありがとうございました。 (2021年4月2日 16時) (レス) id: 41276e8159 (このIDを非表示/違反報告)
たかせ(プロフ) - くぅかなさん» キュンキュンだなんて嬉しい限りです!最後までお読みいただきありがとうございました! (2020年4月6日 14時) (レス) id: 66eef8f813 (このIDを非表示/違反報告)
くぅかな - 一気読みさせて頂きました!クライマックスはもう…熱が出たんじゃないかっていうくらいキュンキュンしてました笑 (2020年4月6日 14時) (レス) id: 8242ba3eb6 (このIDを非表示/違反報告)
たかせ(プロフ) - 藍知さん» こちらこそ、最後まで読んでくださりありがとうございました! (2020年4月6日 11時) (レス) id: 66eef8f813 (このIDを非表示/違反報告)
藍知(プロフ) - 一気に読んでしまいました。素敵なお話をありがとうございます。 (2020年4月6日 5時) (レス) id: 327f8bffcc (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:たかせ | 作成日時:2020年4月4日 12時

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