ひとときのあいを【短編集】

□.松本剛 ﾘｸｴｽﾄ(Twitter) ページ42

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その笑顔、私のもの



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(…買っちゃった)


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普段滅多に行かない本屋に立ち寄って
何年かぶりに購入したのは、人気の女性雑誌
と、言うのも


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「水臭いなぁ、剛くん」


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グラビアとインタビューで、剛くんの特集が組まれることになったからなのです


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とはいえ、当の剛くんは"女の人の雑誌に載るのは恥ずかしいな"って言って
あんまり私に見られたくないみたいだったけど


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(ごめんね剛くん！買っちゃった！)


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心の中で手を合わせて、ページを開けば
そこにいるのは…うん、やっぱり剛くん


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幼さが抜けて、普段のイメージと違う艶っぽい表情
相変わらず逞しい、さすが野球選手って体つきに
ついつい、頬が緩んじゃう私


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「くふふ」

「なーに見てるの」

「え？わわっ、剛くん」

「あれだけ、僕嫌がってたのに」

「だってー…」


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背後から聞こえた声…剛くんに、振り向けば
持っていた雑誌をひょいっと取り上げられた
肩をすくめて、心底照れながら顔を赤くする剛くん


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「あー…ほんとに恥ずかしいんだけど」

「ごめんね剛くん、インタビューも全部読んじゃった」

「うっわ、ほんとに？」

「ほんとほんと」


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うわぁー…って言いながら顔を隠して
その場にしゃがみこんだ剛くん
彼から雑誌を取り返して、私のお気に入りの1ページを開いて見せる


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「剛くん、私感動したよ」

「え？」

「"奥さんのおかげで今の僕がいます。
いつも支えてくれて、心から感謝しています。
僕、奥さんのことが大好きなんです。"って」

「あ〜…もう見られちゃったかぁ」

「全部読んだよって言ったじゃん、ふふ」


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がしがしと前髪を掻きむしった剛くんに
そっと、近づいて
覗いた形のいい額に、キスをした


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この文を読んだ時ね
嬉しくて仕方がなくて、涙が出ちゃって
剛くんが好きだなぁ、愛しいなって心の底から思ったんだよ


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「直接言って欲しかったり、するんだけど？」

「もう…ずるいなぁ、Aは」

「雑誌通して私への思い、先に伝えちゃう剛くんもずるくない？…なんて」

「あー…そっか、」


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ゆっくり立ち上がった剛くんは
私を見下ろして…私を、腕の中に包み込む
ぎゅっと、優しく、私を抱きしめる


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「ありがとう、A」

「うん。こちらこそだよ」

「ずっと、ずっと大好きです」

「うん。私もです」


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お互いに視線を合わせて、笑い合う


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その笑顔、私のもの
ずっとずっと、私の隣にある


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