無感情ブラック【刀剣乱舞】 (ページ43)

今日:2 hit、昨日:83 hit、合計:280,504 hit

(43) ページ43

.

　長谷部様はパチパチと藤色の瞳を瞬かせ、「俺には理解できません」と苦々しく吐き捨てた。

「……理解、できませんか？あなたも刀剣男士なのに？」

「それは……そうでしょう。あんなことをされて、慕っている方がおかしいんです」

　私の質問に、長谷部様は一瞬いい淀んだが、すぐにかぶりを振ってため息をついた。「だから、大和守もあんなに過剰反応するんだ」

「心配ですか。お二人のことが」

「……俺には関係の無いことです。それに、あいつら二人のことを心配するのは、俺の役目じゃない。奴らは新撰組一派に属していますから。馴れ合い(そういうの)は仲間うちでやってくれるでしょう」

「さ、殺虫罠とかいうのも貰ってきましたから。早く掃除を済ませてしまいましょう。ここは空気が悪い」長谷部様が、眉間にシワを寄せながらそういった。

　“新撰組一派”という単語も少し気になったが、それは掃除をしながらでも聞けるだろう。今はまず、目先の仕事を片付けなければ。大和守様の来訪で、だいぶ時間も押してしまっている。

「そうですね。でもすみません。その前に、新しいモップを持ってこないと。先程の襲撃で折れてしまったので」

「え」

「長谷部様は、先に殺虫罠の方を設置しておいてください。私はモップを持ってきます」

「え」

　恐る恐るゴのつく奴を見下ろして、長谷部様はブンブンと頭を振った。「いいえ、俺が持ってきます。だからその、ここで待っていてください。大丈夫ですから」その顔は可哀想なほど青ざめ、引きつっている。

「そうですか？神様にそんなことをさせてしまうのは、少し申し訳ないんですけれど」

「いえ、大丈夫ですから。あなたは気にしないでください。ほんと、大丈夫ですので」

　どうやら長谷部様は、かなり虫が苦手なようだ。ぱちぱちと高速で瞬きながら、真っ青な顔で風呂場から逃げていく。

　ちょっと面白い。

　所々で感じる違和感に、これから上手くやっていけるのか、少しだけ心配だったけれど。まあ、なんとかやっていけそうだ。

.