無感情ブラック【刀剣乱舞】 (ページ40)

今日:1 hit、昨日:83 hit、合計:280,503 hit

(40) ページ40

.

　どうしても長谷部様が引き下がろうとしないので、それならばと殺虫罠の方を持ってきてもらうことにした。既にこんのすけに頼んであるので、声をかければ渡してくれるだろう。

　長谷部様は苦々しく顔をゆがめながら、「男士として不甲斐なし」と呟いて風呂場を出ていった。別に、大して気にすることなどないのに。

　カサカサとその辺を走り回る奴を避けながら、私は湯船の掃除に入ることにした。水を流したことで奴らもずいぶん減ったので、このまま洗剤で仕留めてしまおう。

　よっこらしょと膝をついてしゃがみ込むと、突然、後ろから鋭い殺気を感じた。

　視線だけでそちらを見やると、鈍く反射する刃の切っ先が、ゆっくりと目の前に迫ってくるのが見えた。私は反射的に手元のモップを掴み、刃をいなすようにして腕を振り払う。

　カキン、と軽い音がして、モップは容易く真っ二つに折れた。当然のことだ。木の枝が鋼に耐えられるわけがない。だが──

　グルリと柄を回し、モップの毛のついている方を見知らぬ誰かに向かって突き出す。顔面に灰色の縮れ糸がくっつくと、「ぶッ」と聞くに耐えない声がして、端正な顔が汚臭に歪んだ。

　何年使っていなかったかは知らないが、ずっと掃除用具入れに眠っていたのだ。かなりの臭いであることは間違いない。申し訳ないとは思うけれど、何せ奇襲をかけられた身だ。仕方ないとして大目に見て欲しい。

　グリグリと顔にモップを押し付けると、「やめ、くっさ、」「おい、殺すぞ」などという声が聞こえた。この期に及んでまだこちらに脅しをかけてくるとは、ずいぶんな根性をしている。刀の大きさ的に、刀種は打刀のようだが……一体なんという名前だろう。

.