君はドルチッシモ

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先輩がヘラヘラと笑う
…分かりやすいほどの作り笑い。俺はその顔を見るとちょっと泣きたくなるから『歩きませんか？』なんて言って逃げた


先輩の後ろに位置し歩き始める
…荷物で手が痛いけれど、先輩を見る方が心が痛くなる。これが最善の選択だ



春の暖かい風が俺たちの間に吹き込む
葉混じりの桜を見てなんだかまた切ない気持ちになり、凹んでしまった

歩いている間も先輩が何回も鼻をぐずぐずとさせているからなんだか気になる
…あーあ、先輩、泣いちゃうよ


『…先輩花粉症ですか？』

『うーん…まあ？すごい散ってるし、桜』

『桜は虫媒花ですよ』

『…そうなんだ』

『先輩泣きたいんでしょ』

『矢花、タメ口、ムカつく』


少し涙声先輩が一言一言、搾り出すように話し始める


『人生、上手くいかないよね…泣かないよ。こんなことで、泣かないけど…』



言葉が途切れ途切れで何を言っているのかよくわからない
…でも途切れた言葉一つ一つにどれほどの意味が詰まっているか…俺は知っている
だから、辛いのだ

この上なく凹む先輩に上手い言葉がかけられない
…ずっと一緒にいたのに、俺は先輩に寄り添えない

だけど、


…だけど、、



『10年間、長かったですね』



『急に何？』なんて不思議がる先輩を軽く無視して、俺は話を続ける


『先輩は今も昔も…ずっと変わらないですよ…勿論いい意味でね

カッコよくて、曲がったことが嫌いで、愛情に溢れてて

誰よりも幸せになりたいって…思っていた先輩が傷つくたびに…なんか、、こう…歯痒い気持ちになったりもしましたけど

それでも、先輩はずっと…明るくて
そんな先輩を見てたら…俺も元気になれて、、

だから今日の先輩にはちょっと堪えましたよ…

いつも明るい人が辛そうにしてる姿って…こんなに見てて辛くなるんだなって思いました

でも今思えば…本当はずっとこんな思いを繰り返してたんですよね…

俺は辛い時もずっとそばにいたのに先輩の辛さを何一つ引き受けてあげれませんでした』


俺がそう話している最中に先輩が膝から崩れて…泣いた
あの先輩が俺の言葉で…子供みたいに…全然可愛くない声を上げながらワンワンと泣いている


俺は、周辺を確認してから近くの段差に先輩を座らせる
先輩の涙は堰を切ったように溢れ出す

れんさんのことだけじゃない…きっと今までずっと長い間…ずっと我慢していたものがあったのではないかと俺なりに推測する

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