最終章 僕のアンティシペーション ページ27
あの日、先輩も俺も日常が変わった
俺は恋人と別れたし、先輩は…
あの日から二つの夜を超えた
最初は食事も喉を通らない…なんて状態だったけれど、案外人間は強いものだ。今じゃ普通にお腹も減って、テレビを見て笑いながら食事を摂る始末だ
もう平気だ、自分にそう暗示をかけ続けているとなんだか本当に平気になってきたような気もする
…でも先輩は違う、10年近く一緒にいるけれど先輩のあの絶望したような顔を見るのは未だに慣れない
なんとなくつけたテレビから『新たな出会いに期待ですね』なんてセリフが聞こえる
それを聞いて、初めて4月になった事を知った
…人生、あっという間だな…
この間まで15歳だと思っていたのに…俺は今24になる
少しだけ抗いたい気持ちもあるが無駄だと悟ってカレンダーを3月から4月へと変えるためにめくる
せっかくの休みなのに特別やることもなくただ一人ソファに座ってダラダラとする
…やはり日常には戻れなくて楽器を触る気にはならなかったし、誰かと話す気にもなれなかった
そんなに面白くないテレビを見ている時に家の固定電話が激しく音を立てた
…仕方がないので重い体を起こして受話器を取ると電話から機械的な声が聞こえてきて少しだけイライラする
…自動音声かよ、、
人が介在していないのをいい事に受話器を音を立てて置く
そして、また定位置に戻った
また再び、固定電話のディスプレイがオレンジに光って家に音が響いた
『また自動音声、、』
そう思いつつも、暇だから仕方なく受話器を取る
今度はかろうじて人の声であったが内容は自動音声となんら変わりのないものであった
『あ、…、ないので、、大丈夫です。はい。申し訳ないです』
古着はありませんか？なんて聞かれて音を立てて切ってやりたい気持ちを抑えて丁寧に謝る
なんかついてないな…
再び定位置に戻ろうとするとまた、電話が音を立てた
さすがにもう無視をしてやろうと決め込んだ
だけど、なぜかこの電話、出ないと…なんて第六感が働いた
『はい、もしもし』
『おい！矢花！』
『…嶺亜くん？』
『お前、携帯に電話したのになんで出ないんだよ！』
『あ、、』
携帯…ずっと見てなかったな
『すいません…ちょっと取ってきます』
『いや、今いいから！』
『…嶺亜くん、、なんかありました？』
『Aが轢かれたんだ』
俺は受話器を思わず落としてしまった
電話の向こうから嶺亜くんが俺を呼ぶ声だけが響いた
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マリエ(プロフ) - 妄想女子さん» 他担さんに読んでいただけて嬉しいです♩身に余るお言葉をいただきありがとうございます♡ (2023年9月23日 14時) (
レス) id: 042a02654e (このIDを非表示/違反報告)
妄想女子(プロフ) - 本当に偶然このお話に出会って、他担なのですが、初めから最後まで3時間ぶっ通しで読み続けてしまいました笑すごく好みの作品に出会えて嬉しいです、ありがとうございました。 (2023年9月23日 4時) (レス) @page50 id: a281949802 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：マリエ | 作者ホームページ：http://commu.nosv.org/p/taka231
作成日時：2022年10月26日 21時
