私はラメントーソ (ページ2)

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仕事が終わると、自宅とは逆方向の電車に乗って私は大学に向かう

一応ピアノを教える身なので、仕事が終わっても練習は欠かせない
…だけど、元々私が弾いていたグランドピアノは実家に置いているため半ば絶縁をしている私には取りに行く事はできなかったのだ

そんな時、アップライトピアノですけどなんて声がけをしてくれたのが矢花だった
厚意に甘えて、私は矢花がサークル活動している部屋のピアノを貸してもらう事になったのだ

会社から大学は四駅。便利すぎるその立地に感謝しつつも、職場で練習させてくれればいいのになぁ…と我儘ながらも思う

もちろん手ぶらで行くわけにはいかないので、近くのデパートでお菓子を買っていくけど、結局いつも私が食べてるな、、、

『あっ、先輩お久しぶりです』

『ほんとだね、最近会ってなかったよね』

『お元気ですか？慶君は？』

『ずっと向こうよ。大学も向こうの行くんじゃない？』

『へ〜、慶君すごいっすね〜』

『すごいのは慶じゃなくてお父さんよ。慶にバンバン投資してるんだから』

お父さんっていうのは…中村さんの事
私達三人は意外と時々ご飯を食べに行くような仲良し家族であった

『先輩仕事どうっすか？』

矢花が部室のゴミを塵取りと小さな箒で取りながら尋ねてくる

『まあまあよ。まあまあ、横浜駅前のコンビニでバイトしてたときよりマシだけどね〜、そこまで忙しくないし』

『コンビニって忙しいっすよね〜』

矢花がどうでも良さそうにパタパタと掃除をしている

『あっ、そういえばね。こないだ休憩時間に克樹に会ったよ？』

『髙さんですか？俺ここ二年くらいあってないっすね〜』

『今度みんなでまたご飯行こうって』

『そうっすね、…先輩嶺亜君と会ってたりするんすか？』

『…会ってない。矢花は？』

『俺も髙さんと同じぐらいあってないっすね〜』

嶺亜が矢花に恋愛的感情を抱いていると知ってから早三年。
私に優しさをくれた嶺亜に今度は私が恩返しをしたいと思ってどうにかして矢花と嶺亜を近づける術はないかと試行錯誤しているのだけれども現実はそううまくいかない

そしてこの矢花って男がまたよくわからない男なので、私は余計どうお膳立てしたらいいのかわからないのだ

『とりあえずさ、嶺亜も呼んで克樹も呼んで…四人でご飯行かない？』

『四人？なんで四人なんすか？』

『いや…仲良し四人組みたいなつもりだったんだけど、、』

矢花が嘘つけと大袈裟に笑った