僕はアンプロンプチュ (ページ38)

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天使か悪魔かページ38

『…ごめんな、A』

先輩のお父さんが絶句と言った表情で先輩に平謝りをしている
中村さんは中村さんで少し難しい表情をしていて、申し訳ないけど部外者の俺は今すぐ帰りたいといった感情になった

『どうして謝るのよ、、お父さん』

『…あいつにAと慶を預けるべきではなかった…』

『…どういう事？』

先輩のお父さんはブルブルと震えながら小さく嗚咽を漏らした
何だかそれをみていると居た堪れなくて俺も目を伏せる

『…Aちゃん。君のお父さんはまともに話せる状態じゃないから、俺から話すよ』

中村さんにバトンが渡って、ついに真相が明らかになってしまうとその場にいた全員が息を呑む

『単刀直入に言うと、君のお母さんは自分の稼ぎだけじゃなく、生活費までも…終いには俺や君の貯蓄までもパチンコに注ぎ込んでいたんだ』

『…嘘、、話が違うわよ！…お金を使い込んだのは中村さんだって…』

先輩が大きく取り乱して中村さんをキッと睨みつける
その様子を見て、平常心を取り戻した先輩のお父さんが仲裁に入る

『A。落ち着きなさい。中村さんはね、慶にずっと仕送りをし続けていたんだよ』

『嘘、、知らなかった』

『お前の奨学金だって、肩代わりしてやりたいってずっと仰ってたんだ、、お前らの事をここまで考えて愛している人が、Aが必死になって貯めたお金を持ち逃げするなんて出来るわけないだろ？』

中村さんが静かに泣いているのが見えた
…こんな状況だからよかったとは言えないけど

…それでも、中村さんは本当にいい人だった
その事実に俺は心底安心して、同時に先輩のお母さんに前々から感じていた違和感をより募らせてしまっていた

『…もしかして、お父さんの不倫も？』

『俺の不倫？なんのこと？』

『もしかして、それもお母さん？』

取り乱している先輩の代わりに質問してあげることにした

『お二人の離婚理由って、、』

『俺らは…って、君誰？Aと一緒にステージに出てた子だよね？』

『あっ、この子はAちゃんの彼氏の矢花君です』

しまった！中村さんの中で俺は先輩の彼氏なんだった、、

『へ〜、Aもそんな歳になったんだなぁ、、』

この状況では否定しずらい俺と、否定する余裕もない先輩、何だか俺を評価するような目で見ている先輩のお父さんに、ずっと思い詰めた様子の中村さん

…中村さん、、大丈夫か？

俺は一抹の不安をずっと消し去れないでいた