僕はアンプロンプチュ (ページ25)

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『じゃあ私、豚骨ラーメンね』

『ガッツリ行きますね〜、俺も同じので』

厨房を囲むように設置されている席に並んで座る
先輩は上機嫌で隣で鼻歌を歌っていたりしたのだけど…

…何故か向かいの席のサラリーマンを見て顔色を変えた

『…矢花、ごめん。やっぱりラーメンいいや』

『えっ…なんで…』

『すみません！もう豚骨ラーメン作り始めてますか？』

先輩が小声でタオルを巻いた店員さんに尋ねる
店員さんは少し戸惑いながらもまだですけど…と言った

『よかった…一つキャンセルでお願いします、、すみません』

先輩はそう言うと急いで荷物をまとめて勢いよく外に出て行った
何があったかわからない俺はただ呆然と先輩の行動の原因であろうサラリーマンを見つめていた

…見る限り別に普通の人だ
先輩との間に一体何があったんだ？

隣の上司らしき人に家族の話をしていて、優しそうだし何かトラブルがあったとは考えにくい

…先輩の事だから元彼？とか考えたけどそんな歳の差ではないし、年上好きがここまで高じることは無いと思う

俺はしょうがなく豚骨ラーメンを一人で啜るけど、あんな事があったからソワソワしてあまり味わう事が出来なかった

仕方なくあまり味のしないラーメンを淡々とすするとジーパンに入れた携帯電話がぶるっと震えた

食べ終わってから見ようと思ったけれど、もしかしたら先輩かもしれないと思って急いで開く

文面はさっきはごめんと言ったような内容でそこからはあまりにも申し訳なさが伝わってきたのでなんだか可哀想になってくる
…先輩も先輩で色々あるんだな、、

携帯をいじる手を止めて、再び前のサラリーマンの話を聞く

娘が小学校に入学した〜だとか息子が幼稚園で誕生日会をやった〜だとか到底先輩と結びつくような内容だとは思えなかった

…先輩が子持ちとか？
いやいや、小学校に入学したての6歳とか7歳の子供なんているとは思えないし、あまりにも現実味がない

じゃあなんだ？オーソドックスに金を借りてるとか？

いやいや、どう見てもあのサラリーマンが金融業者だとは思えない

…こんなの深入りするべきではないんだろうけど先輩のあんな表情と行動を見てしまったらついつい気になってしまう

六年目の付き合いになる俺でも先輩について知らないことは沢山ある
別にすごく知りたいってわけでもないけど…

そんなことを考えていた時、サラリーマンの上司がこう言った

『おい阿達！もう行くぞ！』