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． ページ45

『やめて、…呼ばないで』


急いでホールに戻ろうとする矢花のその少しやれたTシャツを掴む
ぐいっと引き寄せたから矢花は私のすぐ近くに配置されて若干気まずい空気が流れる


矢花っていつもヘラヘラしてるイメージだから、今みたいに少し真面目な顔をされるだけでなんだかゾクリとする


『…嶺亜は私の事が嫌いなんじゃないと思う。…これは自意識過剰？』

『全然？俺もそう思いますよ』

『ありがとう』


矢花が優しそうに微笑むから私も照れくさくなって少し俯く


『そうだ、先輩。これから時間あります？』

『あるけど、、なんで？』

『よかったらもう一回聞かせてもらえませんか？』

『どっちよ』

『献呈の方です』



なんで私の演奏なんて聞きたいの？
プロレベルでもないし、謙遜とかではなくきちんと一曲目を弾き切っていたとしても入賞したレベルとは思えない


大学に入ってから、地元のピアノ教室でチヤホヤされていた私は所詮井の中の蛙だと身をもって知ったのだ



『…え〜、、まあ、矢花ならいいよ』

『俺は嶺亜君の代わりにはなれませんよ、最初に言っておきますけど』

『わかってるよ。逆になられたら困る』

『じゃあ一応授賞式だけ見に行きましょう？』

『嫌よ。入賞しないってわかってるところになんて行きたくない』



私は失格なのでもはや選考される身分さえも無くしてしまった。自分が悪いのにあんなことしなければよかったって思っている自分がどこかにいる、、


『はあ、ガキくさいですよ。先輩』



矢花はその点、私よりいくらか大人だ
昔から女の子は男の子よりも精神年齢が高いだなんて言われてきていたけど私達にそれは当てはまらないのかもしれない



『じゃあ授賞式出たら、大学まで一緒にタクシーで行きましょう。運賃は俺持ちで』

『その話乗った』

『決まりですね、行きますよ。そんな綺麗な姿なのにそのまま帰るなんて勿体無い』



矢花って男は実は紳士だ
階段を登る時は後ろからスカート気をつけてくださいよなんて過保護な母親みたいな指摘をしてくるし、絶対に私より前を歩こうとしない


『ねえねえついでにさ、ラーメンでも食べに行こうよ』

『いいですね、、、って、ラーメンは奢りませんよ？』

『ケチ！』

『俺後輩ですって！…っていうか、先輩！もう始まりますよ！』

『え？どうしよう！』

『先輩裾持って！』


私がロイヤルブルーの裾を持ち上げるとその手を矢花がホールドして適度な速度で走り出した

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マリエ(プロフ) - ハルカさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます！これからもよろしくお願い致します！ (2022年4月9日 16時) (レス) id: c6cf29b1a9 (このIDを非表示/違反報告)
 ハルカ(プロフ) - 良すぎて一気読みしてしまいました……お忙しいかとは思いますが続き楽しみにしております！ (2022年4月9日 2時) (レス) id: 17cc79c11f (このIDを非表示/違反報告)
 マリエ(プロフ) - 松さん» そのように言ってくださって本当に嬉しいです！完結まで是非宜しくお願い致します。 (2022年3月29日 19時) (レス) @page35 id: c6cf29b1a9 (このIDを非表示/違反報告)
 松(プロフ) - はじめまして！めちゃくちゃ面白くて更新楽しみにしてます！頑張ってください！ (2022年3月28日 23時) (レス) @page35 id: 309f0f86b1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名：マリエ | 作者ホームページ：http://commu.nosv.org/p/taka231  
作成日時：2022年2月23日 16時

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