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『私が嶺亜のこと好きなの知ってるくせに、、矢花って意外とやなやつだね』
『別に俺は琳寧君が振られればいいと思ってたわけじゃないですよ』
ジャバジャバと激しく流れる噴水でなんだか矢花の声が聴きにくい
しかめっ面の私に気づいたのか彼はそっと横に腰かけてきた
『二曲目、なんていうんですか?』
琳寧君にはごまかせたけど、やっぱり音大生の矢花のことはごまかせなかったみたいだ
『献呈』
『献呈、、ですか?』
『そう、シューマン=リストの献呈』
『初めて聞きました、、シューマンとリストって別々の人じゃないんすか?』
『そうだよ。シューマンが作った歌曲をリストがピアノ曲に編曲したってこと』
ロベルト・シューマンが結婚前夜に婚約者であるクララに贈った歌曲集『ミルテの花』の一曲。そしてミルテの花の花言葉は愛のささやき。
『なんかその曲を弾いてる時の先輩は、、、なんか先輩じゃないみたいでした』
『どういうこと?』
『なんか、気のせいかもしれないけど女の人みたいな目をしてた気がします』
『いやいや、何女の人みたいって。立派な女なんだけど』
そんなにいつも男みたいだった?確かに矢花の前ではやりたい放題だったかもしれない、、
ぐるぐると考えを巡らしていると、矢花がそうじゃないですよって笑って言った
『先輩いつもは肉食獣みたいなのに、あの時は本当に恋してるって感じでしたもん』
『肉食獣っていうのは聞き捨てならないけど、あの曲は恋の歌なの。だから私の目が愁いを帯びてるのは当然なわけ』
矢花があーなるほど、、とか、だからか、、とか呟いててなんだか気味が悪い、お前は探偵かっつーの!
『何?なんか言いたいことがあるならはっきり言ってよ』
『じゃあ、言いますけど、あれは嶺亜君への私信ってことですよね?』
『別に私信ってわけじゃないけど、、嶺亜がいたの知らなかったし』
私信ではない。ただこのあふれる気持ちをどうにかしたくて昇華させただけだ。でも嶺亜を思って弾いたかと聞かれればそれは確実に否定はできない
やっぱり矢花は勘がいい。気味が悪いほどに
『でもね、先輩。』
『何?』
『嶺亜君への私信だろうとなんだろうとあれを聞いて俺は感動しました。
失格でもなんでも、俺の中では一番です。そういえば…嶺亜君も心配してました。先輩がいきなり曲変えるから』
『嶺亜、気づいてたの?』
矢花が落とした大きな爆弾に私は開いた方が塞がらなかった
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マリエ(プロフ) - ハルカさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます!これからもよろしくお願い致します! (2022年4月9日 16時) (レス) id: c6cf29b1a9 (このIDを非表示/違反報告)
ハルカ(プロフ) - 良すぎて一気読みしてしまいました……お忙しいかとは思いますが続き楽しみにしております! (2022年4月9日 2時) (レス) id: 17cc79c11f (このIDを非表示/違反報告)
マリエ(プロフ) - 松さん» そのように言ってくださって本当に嬉しいです!完結まで是非宜しくお願い致します。 (2022年3月29日 19時) (レス) @page35 id: c6cf29b1a9 (このIDを非表示/違反報告)
松(プロフ) - はじめまして!めちゃくちゃ面白くて更新楽しみにしてます!頑張ってください! (2022年3月28日 23時) (レス) @page35 id: 309f0f86b1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:マリエ | 作者ホームページ:http://commu.nosv.org/p/taka231
作成日時:2022年2月23日 16時