猗窩座になってるなんで【煉獄杏寿郎】

12 炭治郎と煉獄さん ページ12

 

「皆無事だ！
　怪我人は大勢だが命には別状は無い
　君はもう無理せずゆっくり休め」


こぶしを握りながら大きな声で言う煉獄に少しびっくりする


「ありがとうございます」

「うん」


　終った…ゆっくり休もう…。

そう思った時だった



ドオン



地を揺るがす振動と音。何かが落ちてきた

鬼舞辻の強い匂い、今までで一番強い
炭治郎の心臓がドクン、ドクンと重く激しく波打った

煉獄が前方を見据えいつでも抜刀できるように柄に手を置く


暗闇の中から光る二つの目

二つの目に刻まれた文字



上弦の…参？


どうして今 ここに…


そこに現れた鬼、上弦の参 猗窩座


ドン


地を蹴り猗窩座が真っ先に炭治郎を狙う

左の拳がまさに顔面を捕らえようとした時


「炎の呼吸 弐ノ型 昇り炎天」


煉獄の炎刀が円い炎を描き猗窩座の拳を真っ二つに切り裂く

ダ ダン、と宙返りながら後ろに引くと、二股に切り裂かれた腕をビチッと刹那のうち繫げた


『いい刀だ』


繋がった箇所から滴る血を舐める

上弦の鬼の圧迫感、凄まじい鬼気と再生の速さを目の当たりにした炭治郎は、恐怖と絶望感に襲われた

「なぜ手負の者から狙うのか理解できない」

目前の敵を見極め次の手を冷静に考える煉獄
柱との差分はここにもある


『話の邪魔になるかと思った。俺とお前の』

｢君と俺が何の話をする
初対面だが俺はすでに君のことが嫌いだ」

『そうか。俺も弱い人間が大嫌いだ。弱者を見ると虫唾が走る』

｢俺と君とでは物事の価値基準が違うようだ｣


『そうか。では素晴らしい提案をしよう』

こっちに来いとでも言うように猗窩座が右手を挙げる


『お前も鬼にならないか』

「ならない」


考えるまでもなく煉獄の答えは生まれる前から決まっている。受け継がれる鬼狩りの血。愚問でしかない


『見れば解る。お前の強さ。柱だな？
その闘気、練り上げられている。至高の領域に近い』


練り上げられた闘気、炎を纏った剣士、唯一無二の

「俺は炎柱 煉獄杏寿郎だ」


『俺は猗窩座。杏寿郎、なぜお前が至高の領域に踏み入れないのか教えてやろう』

蒼く染まった指を煉獄に向けて指す

『人間だからだ。老いるからだ。死ぬからだ
鬼になろう杏寿郎。そうすれば百年でも二百年でも鍛錬し続けられる、強くなれる』


強いものがより強くなる為に鬼になるなど猗窩座の思い違い
煉獄杏寿郎は至高の領域などに興味はない
 

13 上弦の力　柱の力→←11 炭治郎と煉獄さん

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す