月とオレンジ 14

415 戸惑い ページ35

終電の

こみ合う車内へ

乗り込むと人の流れに流されて電車の奥へ






すごい人…






ギュウギュウと押されると苦しくて下を向く






波に流されて奥に来ちゃったけど、ふたりは…






人の隙間を縫って視線を向けると




太輔…







少し先につり革を掴んで

周りの人より頭少し高い







『やっぱり…知りたいなって』






『もしかして…付き合ってたんだよね？』






私はただ戸惑っていた



太輔の言葉にじゃない






太輔の言葉を聞いた自分の気持ちに…







私を思い出したわけじゃない





でも、『知りたい』その言葉が




私を思い出したい





そう言ってくれてる気がして…






『好きな人がいました』






私は…やっぱり思い出して欲しかったんだ





視線の先で携帯を見つめる太輔




…咲良さん？





『Aちゃんと付き合ってたなら…

なんで俺…咲良と…』








そんな風に聞かれたら

ふたりの関係も

彼女のお腹に新しい命が宿っていることも







なにかの間違いなんじゃないかって





『俺を信じて…』







突き付けられた現実が

あまりに辛すぎてずっと思い出さなかったけど








太輔が記憶を失くしたあの夜






あなたは…なんて言おうとしていたんだろう






その横顔にいつかの太輔が重なって…

胸がしめつけられる





…。




…。





わ…//






無意識に見つめていると、

不意にこちらを見た太輔と目が合った






思わず目をそらして、でも気になって





…//







視線の先で面白そうに頬笑んだ





…藤ヶ谷先輩





ガタン




大きく電車が揺れると



キャ//







倒れそうになる私の腕を掴んだのは

みっくん





ミツ「あぶねーよ。」






言われて腕を掴もうとすると



ギュ



え//


みっくんに抱きよせられた






「あ、あの//みっくん//」




人がたくさん居るのにって//

見上げると








ミツ「こんだけ混んでんだから

誰も気にしないだろ。」



って




確かにそうなんだけど






「でも//…」





藤ヶ谷先輩に…//








ミツ「なに？」






心なしか冷たい声






さっきお店で会ったときは

こんな感じじゃなかったのに






なんか…







「…ううん。」







なんて返したらいいか





みっくんが…怒ってるみたく見えたから





また黙って下を向いた

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