月とオレンジ 10

350 それだけ？ ページ3

太「今夜空いてる？」



退勤時間前に太輔に聞かれた






今日…。



今日は、みっくんにお礼にラーメンを奢るって







「何か仕事ですか？

大丈夫です。手伝いますよ。」






太「いや、そうじゃないんだけど…

ちょっと…話したいなって。」






その言葉と表情に

胸がギュッてされるのを感じた






だって、太輔のこんな感じ…

初めてだったから







「…そうですか。

大丈夫です。」






太「じゃあ、近くのカフェで…

仕事終わったら行くから」







そう言われて近くのカフェで待つ







しばらくすると







太「ごめん。お待たせ。」





急いで店に入ってきた







「いえ…。」






コーヒーを頼むと、変な沈黙が漂う






…。





…。






太「プレゼン…すごくよくできてたね。」



今日の…






「え…太輔…見に来てたの？」





知らなかったから







太「うん。途中からだったけど。

よくできてた。」





…。





…。







太輔が私を褒めている




いつもなら、こんなときは

飛び上がりたくなる程嬉しいのに…






太「北山も…来てたみたいだね。」






やっぱり…見てたよね



ってなると…







きっとあのやり取りも







太「協力してもらってたの？

…北山に。」






…だよね






だから、この間も愛美さんが

フェアで会ったと言ったときも

何も言わなかったんだ






太輔はずっと知ってて、何も聞かなかった








「…ごめん。





夏にあったプレゼンがうまくいかなくて…

このままじゃ、ヤバイってときに

みっくんが…」






私の話を黙って聞いている







「太輔に迷惑がかかると思ったの。




できない後輩をもったら

太輔が先輩の指導力不足だって

言われちゃうんじゃないかって…」





…。





…。






太「…そっか。」





…。







「もう少し立て直せたらって

思ってたんだけど…。」








太「…北山とフェアに行ったのも研修のため？」





…。






問いかけに頷くと






太「…婚約者だって、嘘ついて…」






…。






「訂正しようと思ったんだけど

…話の流れが早くて…言いそびれちゃって。」






って、これじゃ、まるで

みっくんが悪いみたいな







「ごめん…。

本当に…心配かけたくなかったの。」






って言いながら

変な罪悪感を感じてしまうのはやっぱり…







太「…本当に…それだけ？」

351 何のごめん？→←349 プレゼン

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す