星に願いを

15 F 君がいない日々 ページ32

藤ヶ谷said





退院して１週間後

俺は仕事に復帰した








千「ガヤさん、大丈夫？



いきなりとばしすぎると

怪我したりするからさ。」








来月のドーム公演に向けて

スタジオでのレッスン








千賀の指導のもと、みんなから出遅れた分を

取り戻そうと、必死に振り入れをする







出遅れた分…だけじゃなくて








踊ってるときや、仕事してるときは

他のことを考えないでいられる気がしたから







渉「太輔、無理すんなよ。

まだ、時間あんだからさ。」







A『絶対に観に行くね！』







来月のドーム公演

そう約束していた








Aと初めて出会ったのは

デビューが間近に迫った頃の夏の海だった







玉に連れられてきた彼女の第一印象は

「小さい子」だった








他には特に特別な印象はなくて

玉の幼なじみなんだ…って、ただそれだけ








当時の俺にはデビュー前から

付き合っている彼女が居たから








彼女もまた俺と同じ世界で働く人で

デビュー前に共演した舞台がきっかけで

付き合い始めた








デビューのタイミングで別れるメンバーも

居たけど、やっぱり俺はそうは考えられなくて…

きっと唯一、関係を続けていたと思う








でも、デビューして半年程で

俺たちの関係は終わった







別れを切り出したのは彼女の方で

そのあとすぐに、彼女は消息をたった







『別れよう。』






たった一言だけを残して








突然の別れに、俺は気持ちの整理が

できないまま…

裏切られたような気持ちで一杯だった








そんな俺を気に掛けてくれる女性は

自慢じゃないけど、わりとたくさんいて







でも、その度に思うのは

俺がこの仕事をしていなかったら

彼女たちは本当に俺に

興味を持ってくれただろうか







どうせまた、飽きたら俺を捨てるんだろ？

ってこと









そんな想いから、俺は誰ひとり

相手をすることはなかった








当時の俺は女性を信用できなくなって

いたんだと思う







だから、Aに告白されたときも

当然、付き合う気にはなれなかった








玉の幼なじみと付き合うとか

正直なんか気まずいし







でも

Aは他の子とは全然違ってた







何度断っても、全然めげなくて







あまりのしつこさに








俺、アイドルだよ？

突然現れたリスクだらけの一般人と

付き合うと思う？







しかも、玉の幼なじみとかさ…って

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