434「私が、この手で…」 ページ34
私は、気持ちがモヤモヤしていた。
それは、確かに嫉妬でもある。
だけど、ただの嫉妬だけなんかじゃない。
自分に無い一面を ひまりさんが持っていたからだけじゃない。
私は、さっきの…ひまりさんの震える手が残像として頭の中を駆け巡っていた…。
震えながら必死に頭を下げて謝る ひまりさん。
あれは演技なんかじゃ無かった。
それを目の当たりにした瞬間…
ひまりさんの…素直で正直で…真っ直ぐな一面に触れた瞬間…
玉森さんが好きだった ひまりさんの一面が見えた気がして…
それを私が…
私の、この手で…
人を斜めに見る…意地悪な ひまりさんに変えてしまったのかもしれない…
そう思わずにはいられなかった。
ひまりさんにしてみれば、ある日突然 私という子が出てきて、玉森さんの彼女になっちゃって…。
衝撃的だったんだと思う。
いや、初めは すぐに玉砕するんだろうな…って見ていたんだと思う。
だけど、そんな期待も外れて…
こうして一緒に住み始めてる。
…それは、桜が美しく咲き誇る季節から…アスファルトからの厳しい照り返しの夏を越え、こうして温泉に行きたいねって話す冬を迎えるまでになってる。
玉森さんのことを今も大好きで止まない ひまりさんにしてみれば、嫉妬で…居た堪れない想いになったんだと思う。
だから、ひまりさんは…
あの手、この手で…
私が掴む玉森さんの手を離そうとする。
嫉妬は…、恋は…、
人を狂わせる。
ひまりさんという本来は真っ直ぐで素直な人柄までを取り上げてしまうほどに。
……………………
もし、そうだとしたら…
私は…
(玉森)「ねぇ、A、こっち向いて。」
私だけ…
こんな幸せになるやり方ってアリなのかな？って…。
A「／／うん…」
玉森さんの方を振り向くと、唇が私に重ねられる。
一度触れた その唇は…
それからは もう離れることを知らなかった。
ひまりさんが持ってきてくれたパンフレットがベッドの下にハラハラと舞い落ち、全身が気持ちいいキスで覆われていく。
………………
私だけが幸せになるなんて…そんなのダメだって、まだ友達にもなりきって無いくせに ひまりさんのことを想いながら、玉森さんの その愛撫に今にもとろけてしまいそうになる自分がいる。
私…一度、ひまりさんと きちんと話そう。
そして、もちろん藤ヶ谷さんとも。
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作者名：ともこ
| 作成日時：2018年6月17日 1時
